このような恐ろしい「教化思想」は実は、いまの中国共産党政権にそのまま受け継がれている。習近平政権は、まさにそのとおりの傲慢にして横暴な「教化」をチベット人やウイグル人、そして中国国内のモンゴル人に押し付けている最中である。彼らはチベット人やウイグル人やモンゴル人の子供たちから自民族の言葉を学ぶ機会を奪い、諸民族の子供に中国語の教育を強制している。諸民族の宗教や伝統をことごとく破壊してこの地上から消していき、彼らの心の漢民族化を図ろうとしている。
中国共産党政権こそ、ナチスドイツも顔負けの民族浄化政策・精神的な民族消滅政策の極悪の推進者となっており、その悪辣さの背後には中華思想という悪しき思想の影響があることを忘れてはならない。
文明社会のわれわれにとって、特に近隣国の日本人にとって、中国共産党政権の危険性と同様、中国伝統の中華思想も大いに警戒すべき危険思想そのものである。(初出:月刊『Hanada』2020年12月号)
著者略歴
評論家。1962年、四川省生まれ。北京大学哲学部を卒業後、四川大学哲学部講師を経て、88年に来日。95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。2002年『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)刊行以来、日中・中国問題を中心とした評論活動に入る。07年に日本国籍を取得。08年拓殖大学客員教授に就任。14年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。著書に『韓民族こそ歴史の加害者である』(飛鳥新社)など多数。