朝日新聞による言論抹殺―前編|小川榮太郎

朝日新聞による言論抹殺―前編|小川榮太郎

2017年12月25日、私と飛鳥新社は拙著『徹底検証 「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』が名誉毀損に当たるとして、朝日新聞から5000万円の民事訴訟を提訴された。私は、以下に述べる理由により、この訴訟そのものが日本社会の「言論の自由」を、今後大きく抑圧する可能性のある禁じ手だと考える。


……まことに立派な綱領である、恥ずかしいまでに……。

「言論の自由」を抑圧する

2017年12月25日、私と飛鳥新社は拙著『徹底検証 「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』が名誉毀損に当たるとして、朝日新聞から5000万円の民事訴訟を提訴された

私は、以下に述べる理由により、この訴訟そのものが日本社会の「言論の自由」を、今後大きく抑圧する可能性のある禁じ手だと考える。

第1に、大企業が弱者に対し、恫喝的意図をもって仕掛けた典型的なスラップ訴訟であるからだ。

第2に、朝日新聞は膨大な紙面を持つ日本有数の言論機関だ。私の著書に不服があれば、たっぷりある紙面を使って自ら検証・反論して「名誉」を回復すればいいだけのことである。朝日が最高裁まで争うつもりなら、判決の確定は5、6年以上かかる可能性もある。

その間、朝日が毀損されたと称する「名誉」は宙ぶらりんのままなのだ。もし読者の前で黒白をつける自信があれば、紙面を使えば、時間も金も遥かに少なく名誉は回復されるはずだ。一番有利な言論場を所有する新聞社が、それをせずに高額賠償請求に持ち込む。これは単なるスラップ訴訟以上のもの、言論機関による言論抹殺である。

第3に、訴状があまりにもひどい。訴状は《以下に示すとおり、原告の森友学園問題及び加計学園問題に関する一連の報道に「ねつ造」「虚報」はない》と断言しながら、一方で《原告は上記両問題について安倍晋三首相が関与したとは報じていない》と主張している。

下らぬ詭弁だ。2017年5月17日付の文科省文書スクープ「新学部『総理の意向』」という大見出し1つとっても、常識では、安倍首相の関与の報道というべきだからだ。実際、両事件ともスクープし、主導し続けた朝日が安倍氏の「関与」を報じていないと今更のように訴状で主張している一方で、日経新聞の2017年12月17日の世論調査でさえ、国有地売却の手続きをめぐる政府の説明に「納得できない」は78%を占め、加計学園の獣医学部設置の計画認可に関する政府の説明も「納得できない」は69%だ。

初報・主導の朝日が「関与」を報じていないのに、なぜ初報から10カ月も経ってこんな数字が続くのか。大きな原因は、朝日が2017年2月17日の森友学園報道第一報から今年1月12日現在までの11カ月で、650本以上というロッキード疑惑並の分量の記事で「安倍疑惑」に強く輿論誘導し続けたからではないのか。

1年近く経過しても関与の物証が一つも出ない事柄の記事を数百本の大見出し、600本以上の記事で報じ続けたら、それは日本語の語感において完全に「捏造」「虚報」だ。

朝日新聞の渡辺雅隆社長と高橋純子編集委員は、物証はないが不倫関係の可能性がある、と私が11カ月、650回記事にしたら、朝日は黙って放置しておくか。物証はないが、不倫が絶対にない証拠もないのである。

第4に、以上全面的にナンセンスな訴訟であるから、訴訟自体が私への業務妨害、圧力だ。家族が診断書の必要なレベルの心身の不調をすでに訴えている。私自身、音楽批評や日本精神史など、現状で少なくとも3本の専門研究の出版依頼を抱えながら、訴訟準備に忙殺されている。金と時間の圧迫はすでに著しい。

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