横行する「日本人スパイ狩り」習近平の「人質外交」 と北大教授帰国の真相|矢板明夫

横行する「日本人スパイ狩り」習近平の「人質外交」 と北大教授帰国の真相|矢板明夫

2019年11月、中国に拘束されていた北海道大学岩谷教授が突如保釈された。これは実は日本外交の小さな勝利だった――。一方で、いまだ不当に拘束されている日本人“救出”は遅々として進んでいない。中国による邦人拘束をひた隠しにする外務省と日本政府の及び腰の姿勢……このままでは日本は世界の笑いものになる!今こそ日本政府は習近平の「人質外交」に毅然と対峙せよ。


Getty logo

この他、2015年から2018年にかけて、中国でスパイ容疑などをかけられ拘束、起訴された日本人は、以下の9人であることがメディア報道によって判明している(年齢はいずれも当時)。

1、愛知県出身の会社員の男性、54歳。2015年、旅先の浙江省で拘束され、軍事施設や公船を撮影したとされる。2018年に懲役12年の実刑判決。

2、神奈川県在住のパチンコ店店員の男性、58歳。元脱北者で、北朝鮮にいる妹を救出しようとして日中間を往復していた2015年に遼寧省の中朝国境近くで拘束され、2018年に懲役5年の実刑判決。

3、東京都の日本語学校幹部の女性、58歳。元中国人で、中国の機密情報を日本の政府機関に提供した容疑で拘束され、2018年に懲役6年の実刑判決。

4、札幌市の団体職員の男性、73歳。元日本の大手航空会社社員で、定年退職後、中国と経済交流を促進する団体を立ち上げた。2018年にスパイ容疑で懲役12年の実刑判決。

5、東京都の日中友好団体幹部、男性、61歳。元日本社会党職員、中国との交流などを担当し、中国の砂漠に植樹するプロジェクトなどに参加。2017年にスパイ罪で起訴。2019年に懲役六年の実刑判決。

6、千葉県の地質調査会社社員、男性、70代。中国の業者の依頼を受けて温泉を探すために訪中したが、国家機密探知罪で逮捕。2018年5月に起訴。2019年に懲役5年6カ月の実刑判決。

7、千葉県の地質調査会社社員、男性、 50代。中国の業者の依頼を受けて温泉を探すために訪中したが、国家機密探知罪で逮捕、2018年6月に起訴。 2019年に懲役15年の実刑判決。

8、出身地不明の会社代表の男性、60代。遼寧省で拘束され、2018年3月にスパイ罪で起訴。2019年に懲役5年6カ月の実刑判決。

9、大手商社、伊藤忠の男性社員、40代。 2018年2月に広東省で国家安全当局に拘束され、同6月に起訴。2019年に懲役3年の実刑判決。  

この他、メディアに報じられていない拘束された日本人も数人いると噂されている。

起訴された日本人全員が冤罪の可能性大

拘束、起訴された日本人の職業を見ると、中小企業の会社員、日本語教師、パチンコ店のアルバイト、中国の砂漠で植林プロジェクトを推進する「日中友好人士」などが含まれている。いずれも専門的なトレーニングを受けた情報分野のプロではない。同時に、中国の国家機密を探れる社会的立場にもない。   

そもそも日本の情報機関は、国内の過激派の動きを監視することを仕事の中心にしており、海外に工作員を送る法的根拠もなければ予算もない。先述した伊藤忠商事の社員を含めて、起訴された9人全員が冤罪である可能性は極めて高い。

Getty logo

関連する投稿


中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取る戦いを行っている南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!


最新の投稿


【マーケティングから見た政治】小林鷹之「弱者の戦略」で大逆転|松尾雅人【2025年11月号】

【マーケティングから見た政治】小林鷹之「弱者の戦略」で大逆転|松尾雅人【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『【マーケティングから見た政治】小林鷹之「弱者の戦略」で大逆転|松尾雅人【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】サンモニ、本格的な高市攻撃を開始|藤原かずえ

【今週のサンモニ】サンモニ、本格的な高市攻撃を開始|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

トランプ政権の下で、混迷を極める米国。 彼の目的は、いったい何のか。 トランプを読み解く4つの「別人化」とは――。


最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】

最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】

絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。