「常に友好関係にある隣国」ってどこだ?
2020年の4月号の本欄で、次のように書いた。
《さきごろ二階(俊博・自民党幹事長)は都知事・小池百合子に、「都がストックするマスクや防護服を中国に贈れ」と申し入れた。
小池は計12万着の防護服を中国に贈った。ストックは都民の血税による都の財産だ。それを二人の一存で処分したのなら小池は背任、二階は背任教唆だ。
それより何より、いまや日本は感染症拡大の不安を抱えている。今後、大量のマスクや防護服を必要とする事態が来るかもしれない。なのにそれらのストックを中国に放出するとは、いかにも危機意識に欠け、職責からして無責任ではないか。日本がマスク不足になろうが、大事なのは中国なのか》
これより先、二階は自民党役員会(2月10日)で中国への支援金を提案した。所属議員全員の3月分の歳費から一律5000円を天引きして中国に贈る。これを役員会は決定した。記者会見で二階は言った。
「常に友好関係にある隣国に何かあった場合、支援するのは当然だ」
常に友好関係にある? 今回のウイルス騒ぎの最中でさえ、中国公船や潜水艦が尖閣の領海を平気で侵犯している。政権党の幹事長として知らないはずはない。さすがに一部の自民党議員らが、
「支援金を出す・出さないは各議員の判断によるべきで、天引きなんぞトンデモナイ」
とする意見書を二階に突き付け、二階のバカげた提案はあえなく撤回された。
すでに日本でも日を追って感染者は増え、死者も出始めていた。2003年のSARSといい、2015年に中国が拡大したMARSといい、今回の新型ウイルスといい、つくづく中国は災いを世界に撒き散らす。
迷惑を被っているのはこちら日本だ。なのに迷惑をかける中国に支援金を贈る? 冗談じゃないというのが二階に反対した議員らの思いだったに違いない。
民の血税による都の財産を中国へ
二階にすれば、人も知る親中派の顔を潰された思いだ。だからであろう、これに懲りるどころか、お次は都知事・小池に前述の提案だ。これで中国へも顔が立つ。
一方の小池は7月に都知事選を控える。気がかりは自民党の都連が独自候補を立てるかどうかで、頼りは自民党幹事長・二階だ。
昨年秋、次期候補の人選に迷う都連を横目に、二階は言った。
「小池さんしかいないじゃないか。小池さんに勝てる候補がいるのか」
この発言に都連が猛反発、二階が詫びを入れた経緯がある。とはいえ小池にとって二階は頼みの綱だ。否応なく二階の意向に沿って防護服12万着を中国に献上した。
のちにこの一件を取材した『週刊文春』によれば、二階はアリババ創業者ジャック・マーの依頼を受けて小池に要請し、小池は10万着を二階が名誉理事長をつとめる「日本医療国際化推進機構」を通じてアリババに寄付した。
その後も献上は続き、合計30万着が都から中国へ贈られた。そのうち政府や公的機関からの依頼でないのは二階が小池に要請したケースだけ。防護服やマスクなどのストックは都民の血税による都の財産だ。これを二階と小池、二人の一存で処分した。
それより何より、日本も感染症拡大の不安に晒されている。いずれ大量のマスクや防護服を必要とする事態が来るかもしれない。その危機意識が少しでもあれば、軽々にそれらのストックを他国に譲れないはずだ。
現に危惧された事態が起こっている。目下、日本の感染者は8722人、死者178人。うち東京都の感染者は2595人、死者53人で、いまだピークアウトの時期は見えて来ない(4月15日時点)。
すでに東京都の感染症指定の病院は急増する患者と医療資材の不足から医療崩壊の危機にある。多くの医師から「防護服もマスクも足りない。これで戦争をやれというのか」といった悲痛な声が聞こえて来る。
中には「これ、見て下さい。3D印刷で作ったんです」と手作りのフェースガードを示す院長もいる。飛沫感染する武漢ウイルスを防ぐには必須の防具だ。
こういう医療現場の声を二階や小池はどう聞く? せめて、あの30万着の防護服があればと後悔しないか? 記者会見で訊いてみてくれ。なのに、いまや小池は「いま求められているのは国の決断です」などと暗に安倍を批判してはしゃぎ出した。
某誌のタイトルに「コロナ危機で総理への道が見えた小池百合子 無能確定の安倍晋三」だとさ。「カイロ大学首席で卒業」の学歴詐称の女天一坊が総理に? いやはや。