本書では陰謀論と科学否定論の関係性にも切り込んでいる。陰謀論はインターネットを介したテキストや動画で爆発的に広がっているが、実は「印刷物として出版されたもの、つまり活字なら正しい」わけではない。ジュンク堂書店にある「陰謀論」の棚に並ぶ本を見ればそれは明らかだろう。
科学や歴史の検証・論の批判と、否定論はどこが違うのか。情報の受け手だけでなく発信側も意識する必要が大いにある。もちろん自戒を込めねばならない。
本書の著者である松村氏は、社会学・科学論を専門とする大阪大学大学院の准教授。こうした問題に取り汲むきっかけになったのは、「在日特権」という存在しないものを心から信じ、批判する人々の姿を目の当たりにしたことだったとあとがきで触れている。
陰謀論を紹介するネタを披露していたあるタレントの決め台詞に「信じるか信じないかはあなた次第です」というものがあるが、人々の共通認識を作り上げる客観的事実や科学的根拠までもが「あなた次第」になりつつある現在、本書の問題意識はとてつもなく重要になりつつある。
本書をガイドに「科学否定論」をうまく乗りこなし、向き合うための手段を身につけたい。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

