悪意をもって内心を曲解
2026年8月30日の『サンデーモーニング』で気になったのは、前週に引き続きICCに関する話題です。
“日本人トップ”「ICC」赤根所長に制裁 トランプ氏が敵視…なぜ?「“力による支配”が横行する世界に…」高市総理「大変残念」と述べるにとどまる【サンデーモーニング】 | TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2890439かねてからトランプ氏が敵視してきた「国際刑事裁判所=ICC」。そのトップを務める赤根智子所長の制裁に踏み切りました。2025年3月、物々しい雰囲気で移送されてきたのは、“フィリピンのトランプ”と呼ばれたドゥ…
膳場貴子氏:オンラインで記者会見をしたのは、米国から制裁対象に指定されたICC=国際刑事裁判所赤根智子所長。ICCの解体まで主張して関係国に圧力をかける米国に屈せず法の支配を守る努力を日本政府に求めました。赤根所長への制裁が発表された当初、高市総理は…
高市早苗首相:大変残念に思っております。これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応してまいります。
膳場貴子氏:批判を抑え、トランプ政権への配慮が滲む姿勢に自民党議員からも厳しい声が上がります。
中谷元前防衛大臣:通常は「極めて遺憾」ということを言いますが、「残念」は感想であって、意思ではありません。「抗議」「断固支持」という言葉の表明を求めて、本制裁の明確な抗議と即時撤回を求めるべき。
膳場貴子氏:この翌日、改めて会見した高市氏は…
高市早苗首相:今回の措置は日本の立場と相容れるものではなく、大変深刻に受け止めております。国際社会における法の支配の強化に今後も取り組んでいく考えでございます。
膳場貴子氏:法の支配を軽んじるトランプ政権に日本がどう対峙していくのか注目が集まる中、高市総理は当初に比べますと、少し踏み込んだ状況ですけれど…
松原耕二氏:赤根所長に会見の前日にインタヴューをしたのですが、本当に語り口が抑制的で、政府批判は一切せずに、逆に日本政府には法の支配を守る役割を果たしてもらいたいという前向きな期待を何度も何度も繰り返していたのが印象的でした。
一方の高市総理は「大変残念」という発言から6日経ってようやく「相容れない」という発言に変えたわけですが、これは「ICCを守ろう」という署名活動、これの世論の高まりとか、あるいは赤根所長の会見がセットされたというのを知って慌てて軌道修正したように、スケジュール的には少なくとも見える。(中略)
トランプ大統領に気を使うあまり日本の背骨というか原理原則までもし失ってしまったら、本当に日本がどんな国かわからなくなってしまう。
国民の安全保障に責任のない人達は、高市総理の発言を激しく批判していますが、国民の生命と財産を守る責任を負う一国の首相が、同盟国の特定の行動に対して即座に反駁する必要はありません。その真意を十分に見極めたうえで、譲れない内容があれば反論するのが妥当です。
実際、高市総理は、米国の主張を「相容れない」、すなわち日本の立場とは両立しないと否定しました。高市総理のこの発言の背景には、松原氏が憶測するように、国内の署名活動の高まりという内的要因があると考えられる一方で、日米政府が互いの「主張」が相容れないことを認めた上で互いの「立場」を認め合う何らかの水面下の確認作業があった可能性もあると考えられます。
また、赤根所長の会見がセットされたことは、高市総理にとって必ずしも不都合な要因ではなく、この会見前に高市総理が事実上の強い支持を表明したことは、赤根所長が政府による支持を背景に発言できるよう配慮したと見ることもできます。
今回の松原氏のように、ひたすら悪意をもって高市総理の内心を曲解するのは、フェアなジャーナリズムではありません。このような【確証バイアス confirmation bias】に基づく【人格論証 ad hominem】が許されるのであれば、誰でもフリーハンドで非難することができます。
何より、現段階で日本政府は「日本の原理原則」である法の支配の主張を失っていません。真逆の仮定を根拠に「日本がどんな国かわからなくなってしまう」と結論付けるのは、【事実反実の誤謬 hypothesis contrary to fact】と呼ばれる誤謬です。

