トランプが個人を狙い撃ち
トランプ大統領が国際刑事裁判所(ICC)所長である赤根智子氏らを制裁対象とすると発表。理由はICCがイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したからだという。
ICC批判や逮捕状への反論ならまだ分かるが、個人を狙い撃ちにするやり方には心底驚いた。
制裁の発動によって、赤根氏はアメリカに関連する経済活動を停止される。アメリカに資産があれば凍結され、クレジットカードもメールも使えなくなるのだという。いかに現代人としての生活がアメリカ企業の〝インフラ〟頼みであるかも改めて認識するところだ。
高市総理は当初、制裁発動を「残念」と表現して「あまりに表現が弱い」と批判された。数日後に「日本の立場と相いれず、深刻に受け止めている」と改めて述べている。
アメリカに対しては「様々なレベルで働きかけを行ってきた」とも述べたが、それでも赤根氏に制裁が発動された以上、その働きかけは無下にされた格好だ。
日本人が所長を務める国際機関と、同盟国であるアメリカの対立は、日本にとっては「あちらを立てればこちらが立たず」になりかねない。「日米関係を危険にさらしてでもICCを守るべきなのか」などの声もある。ゆえに政府の対応にも賛否両論飛び交っている。
ICCとはどのような組織なのか。スティーヴ・クロウショー『権力者を訴追する――戦争犯罪と国際法廷の闘い』(白水社)は、そんな疑問を紐解く手がかりを与えてくれる。
表紙カバーには、まさに今ICCから逮捕状が出ているネタニヤフ首相と、ロシアのプーチン大統領の顔写真が手配書よろしくデザインされている。
ICCは「無力」なのか?
著者のクロウショー氏は東欧革命やバルカン戦争を取材したジャーナリストでありながら、人権活動家としてヒューマン・ライツ・ウォッチなど人権にかかわる国際機関でも活動してきた人物だ。
本書の序章は、クロウショー氏が赴いたウクライナのブチャから始まる。ロシアがウクライナに侵攻してすぐ、この街を襲った惨劇によって、全く知らなかった街の名前を忘れがたいものにしてしまった。
眼をそむけたくなるような描写ののち、クロウショー氏はこう書いている。

