さらに、英国人彫刻家、レベッカ・ホーキンスさんがベトナム戦争で残虐な性虐待を受けた女性たちをはじめ、世界中の紛争下において性暴力の被害者となった人々を哀悼する目的で高さ230センチ、重さ700キログラムのブロンズ製の「ライダイハン母子像」を製作。枝が人々の体を包み込んで抜け出せなくする「ライダイハン母子像」は、ベトナム原産の「絞め殺しの木」の根が母と子を締め付けている様子を表している。
彫刻を製作したホーキンスさんは、こう胸を張った。
「この像は、逆境に負けない母子の内面の逞しさを称賛する。重要な運動をより多くの人々に知ってもらいたい。被害女性や子供たちが受けてきた苦しみに終止符を打ち、正義と決着を与えることを願う。母子たちは、困難と苦境にありながら、勇気を持って自分たちのことを語り、正義を勝ち取ろうと運動を始めた。像が、この運動の一部となり、これらの勇敢で勇気ある女性たちと会うことは生涯にわたる名誉だ」
6月11日にはウェストミンスターのチャーチハウスで除幕式を行い、ムラド氏らが全世界に向けて発表した。
ヘイグ元外相は性暴力防止イニシアチブを立ち上げ、性暴力抑止に乗り出したが、南スーダンやミャンマー、シリア、イラクで性暴力が継続しており、「いまこそ、行動を起こすべき」(国連難民高等弁務官事務所特使を務める米女優、アンジェリーナ・ジョリーさん)との認識から、英政府は性暴力防止の専門家を紛争地に派遣して、性暴力犯罪の証拠を集めて司法に訴え、被害者に寄り添い、サポートする構えだ。
「国際大使」のストロー元外相は、早速英議会のオンラインメディア「ポリティックス・ホーム」に寄稿して、「世界の性暴力撲滅に主導的な役割を果たそうとしている英国は、過去の歴史的な性暴力を忘れてはならない」と述べ、置き去りにされてきたライダイハンも注視すべきだと訴えた。
ストロー元外相は、「日本に対して、従軍慰安婦について責任追及して謝罪させることに成功した韓国政府が、ライダイハンについては存在を認めず、被りして事実調査も行っていないのは大変残念だ」と、韓国政府の矛盾する対応に、繰り返し疑問を呈している。
韓国政府と戦い続ける
その後、7月31日に「ライダイハン母子像」はウェストミンスターにある小さな公園、セントジェームズスクエアガーデンに野外展示され、一般公開された。
周囲には、ロンドン図書館やシンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)、さらにオックスフォード・アンド・ケンブリッジ・クラブや、退役海軍・陸軍軍人クラブなど格式高い会員制のジェントルマンズクラブ(紳士クラブ)が立ち並ぶ。高級住宅街の中心にある閑静なガーデンは、都心のオアシスだ。プライベートのガーデンだが、平日は午前10時から午後4時半まで一般に開放されている。
その公園の真ん中に、名誉革命で英国国王となり、権利の章典を発布して「君臨すれども統治せず」の大原則によって、立憲君主制の基礎を築いたウィリアム3世のブロンズ像がある。「ライダイハン母子像」がこの近くに建立されたのは、「ライダイハンのための正義」がウィリアム3世の功績にあやかって、議会制民主主義に基づいてライダイハン問題を解決しようという意図を表している。
裏を返せば、ベトナムで女性の人権を踏みにじりながら、40年間にわたって反省も公式謝罪も、賠償どころか調査さえも避けてきた韓国政府の姿勢が、英国の民主主義や人権、法の支配の価値観から、大きくかけ離れていることを示している。
もちろん被害者のライダイハンにとっても、ロンドンの中心地での「母子像」建立は大きな意味がある。ライダイハンのトラン・ダイ・ナットさんは、「我々ライダイハンと、韓国軍兵士により蹂躙された母たちにとって歴史的な日となった。韓国政府からの認知と正義を勝ち取るため、戦い続ける」と決意を新たにした。