カークは若者だけでなく、保守派の有名人たちとも、ネット番組での共演などを通じて交流を深めていった。カーク暗殺後、カークの番組にはそうした保守派の論客たち、具体的にはJ・D・ヴァンス副大統領に始まり、デイリー・ワイヤーのメンバー、メーガン・ケリーなどが、代わる代わる司会を務めている。
メーガン・ケリーは長年にわたってフォックスの看板女性キャスターだったので、日本でも知っている人はいるかもしれない。今は独立して自分のネット番組をもっている。彼女の真骨頂が発揮されたのは、新型コロナウイルス起源問題で、天然起源を主張するウイルス学者ロバート・ゲイリーを番組に呼んだときである。ゲイリーは相手を素人と思って舐めていたが、ケリーは非常によく勉強しており、ゲイリーを議論で追い詰めた。日本で、彼女のように科学に関する話題で科学者を論破できるジャーナリストはいないだろう。
保守系ネットメディアの天才
一方、デイリー・ワイヤーのことは、ほとんどの日本人が知らないと思うので、簡単に紹介しておこう。デイリー・ワイヤーは多数の保守論客を抱える保守系ネットメディアで、その中心人物はベン・シャピーロである。彼は1984年生まれで、16歳でUCLAに入学、20歳でハーバード・ロースクールに入学した天才である。弁護士資格も有しているが、17歳からコラムニストとして活動しており、早くから政治活動を始めた点ではカークと共通している。ただし彼はキリスト教徒ではなくユダヤ教徒である。
シャピーロはカーク同様、米国全土の大学で講演活動もしている。彼の場合、ディベートの前に講演も行うが、大半の時間を質疑応答に充てる。質問の順番は反対意見を優先させる。そこで、多くの左翼がこれまでシャピーロに論戦を挑んでいるが、彼はそれをことごとく論破してみせている。その意味で、カークの先輩に当たる人物と言えるかもしれない。
デイリー・ワイヤーはマイケル・ノールズやマット・ウォルシュなど、ほかにも多くの論客を抱えている。いずれも30代の若手だが、なかでもノールズは新型コロナウイルスの起源を隠蔽したアンソニー・ファウチを厳しく批判しており、彼の悪事を暴く番組を制作するなどの活躍をしている。このように若手中心で始まったデイリー・ワイヤーであるが、最近はジョーダン・ピーターソンのような保守派の重鎮もここに加わっている。

