戦争の反省をすることは大事だが、至る所で戦争に対する思考停止が起きてきたのが戦後日本でもあった。
戦争終結の難しさは、今のロシアとウクライナの戦争を見ていても分かる。今すぐやめれば被害者を少なくできるかもしれないが、将来の危険が残り、結果的にさらに大きな被害となって子供たちを襲うかもしれない――。ウクライナはそう考えるからこそ、将来の危険を防止できる仕組みなくして停戦を受け入れることはないのだ。
将来の危険を防止するために、ウクライナはNATO入りを条件としたい一方、それはもとより「脆弱性」を戦争の口実としてきたロシアにとっての将来の危険となるため、話がまとまらない。本書では「戦争終結のジレンマ」として、このメカニズムが説明されている。
まさかの自作イラスト
軍事や安全保障に関する思考停止を解きほぐす本書は、同時に「帝国の起こり」を導入に第一次世界大戦以降の現代史を安全保障目線で読み直すことができる一冊でもある。映画『スターウォーズ』や原爆に関する自身の体験なども交え、書き手と読者の距離も近い。
その意味で、かなり「読み得」であり、早くも三刷となっているのも納得だ。
加えて、本書の魅力はもう一つある。帯や本文に掲載されている挿絵を千々和氏自身が手掛けている点だ。子供の頃に漫画家を目指したこともあったという千々和氏の、味わいのあるイラストが、本書の魅力をぐっと増している。
中高生に渡す最初の一冊としてはもちろん、大人の学び直しの一冊としてもお勧めしたい。

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。