8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

それはただの遊び心か、それとも深く暗い意図のある“サイン”か――。FBIを率いた男がSNSに投稿した一枚の写真は、アメリカ社会の問題をも孕んだものだった。


書籍の発売に先立ち、コミーは米ABCニュースのインタビュー番組にも出演し、トランプに対し「道徳的に大統領として失格だ」と強い口調で非難。「彼の行動は、組織や文化の規範を大きく損なっている」とも語った。

この“先制攻撃”に対し、トランプも容赦なく応戦する。インタビューの放送前から、すでに「嘘つき」「ゲス野郎」と罵倒を浴びせていたが、放送直後には「史上最悪のFBI長官だ」と激しく反発。両者の対立は、泥沼の様相を呈していく。

その後もトランプは、数年にわたりコミーを攻撃し続けた。2019年には、「反逆罪で訴追されるべきだ」と名指しで非難。具体的な罪状があったわけではないが、「刑務所に入れるべきだ」とまで主張している。

そして2024年11月、トランプは大統領選で歴史的な圧勝を収め、再選を果たした。
その半年後の5月、元FBI長官ジェームズ・コミーはSNSに「86 47」と貝殻が並んだ写真を投稿した。

8年間抱いてきた私怨

ニコール・パーカー(Foxニュース コントリビューター)

興味深いことに、今回の騒動も、前回の“先制攻撃”と同様に、コミーの新著出版を目前にしたタイミングで起きている。NBCニュースは21日、彼がニューヨーク市内のバーンズ&ノーブル書店で、自身の新作犯罪小説『FDR Drive(邦題未定)』(5月20日発売)について語る様子を紹介している。

こうした経緯から、前述のFoxニュース司会者ショーン・ハニティーの番組では、問題の投稿が「新刊の宣伝を狙ったものではないか」という見方が取り上げられた。

番組に出演した元FBI特別捜査官のニコール・パーカー氏は、「コミーは、私が誇りを持って働いていたFBIという機関を破壊した」と述べた上で、「彼は話題を作りたかったのだ。新しい本を出す予定があり、自分でも『ちょっと注目を集めたかった』と認めている。でも『まさかここまでの騒ぎになるとは思わなかった』とも言っていた。―一体何を考えていたのか?」と疑問を投げかけた。

さらにパーカーは、コミーがかねてからトランプに対して強い私怨を抱いているとした上で、「彼は8年前の5月に解任されて以来、トランプ大統領に報復できることなら何でもやろうとしている。彼はトランプ氏が自分のレガシーを壊したと信じている」と述べ、厳しく批判した。

エリート層特有の傲慢な姿勢

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