8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

それはただの遊び心か、それとも深く暗い意図のある“サイン”か――。FBIを率いた男がSNSに投稿した一枚の写真は、アメリカ社会の問題をも孕んだものだった。


新著を読むコミー元FBI長官(インスタグラム投稿より)

激しい非難の応酬の延長線上に起きた今回の騒動。新刊をめぐる“炎上商法”的な側面も否定はできないが、コミーのこうした“遊び”にも見える投稿の奥には、選挙で選ばれた現職大統領を静かに、しかし確実に否定しようとする、エリート層特有の傲慢な姿勢が透けて見える。彼らは自身の地位や既成秩序を守るため、トランプ排除を声高に叫び続けている。

しかし、コミーのようなエリート層が「トランプを排除せよ」と叫び続けても、トランプがこれほどまでに強固な支持を集めた背景には、単なる積極的支持だけでなく、民主党に対する根強い不満と強烈な「ノー」の意思表示もあったことを見逃してはならない。

過激な排除志向や自己中心的な行動

この現実は、左派の一部に見られる過激な排除志向や自己中心的な行動がかえって分断を深め、国民の幅広い支持を得ることを困難にしていることを示している。
庶民の党だったはずの民主党は、今やエリートによる権力闘争の場となり、党内の分断、候補者の求心力のなさ、現実から遊離した理想論ばかりが目立つようになった。民意が選んだのは、そんな空虚さへの反動とも言える。

もちろん、トランプにも問題はある。だが、批判者たちが感情的な言葉や象徴的な表現で応じたり、ただバッシングに終始して未来のビジョンを語らないことこそが、逆に彼を際立たせているのではないか。

トランプは「MAGA(米国を再び偉大に)」「黄金時代」「常識の革命」など、賛否を超えて明快な物語を掲げてきた。関税政策などでは批判を浴びつつも、中国に覇権を渡すまいとする意志を、外交戦略として明確に示している。

コミーをはじめとする反トランプ層に欠けているのは、こうした物語を語る力、ビジョンの明瞭さ、そして民意をつかむ演出力なのかもしれない。

民意よりも、「自分たちこそ正義だ」

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