世界は「EV無理押し」を見直している
アメリカは、トランプ政権が復活すれば、エネルギー政策で直ちに大きな方向転換を行う。トランプ陣営は、新開発のモジュール炉(工場で生産し、設置現場に運ぶタイプの小型原子炉)を将来のエネルギー供給の柱にする方針も打ち出している。
欧州でも、ゼロ原発政策を採ったドイツが、ロシア産天然ガスの供給途絶によってエネルギー危機に陥った教訓から、フランスを中心に、原発新増設の動きが出て来ている。
トランプ陣営は、電気自動車(EV)に対する各種優遇策も打ち切ると宣言している。イギリスなど欧州諸国でも、「EV無理押し」を見直す動きが強まっている。背後には、安価なEVで世界支配を狙う中国への懸念もある。
これらこそが「世界の潮流」であろう。ハイブリッドに強い日本の自動車産業にとっては望外の展開でもある。新政権は、財政、エネルギー分野における「トランプ的転換」の機を逸してはならない。
国際政治学者、福井県立大学名誉教授。1957 年、大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了後、京大法学部助手、文部省教科書調査官を経て、2003 年、福井県立大学教授。2023年より現職。拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長、国家基本問題研究所企画委員・評議員。著書『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)が7刷と話題に。