G7加盟国である日本は、実はチベット支援運動に熱心な国だ。2016年12月に発足した超党派の「日本チベット国会議員連盟」には100名以上が加入しており、これは世界で最大規模である。会長は自民党の下村博文衆議院議員で、2021年には安倍晋三元総理が顧問に就任した。その折に安倍氏は、「私も中国との首脳会談の折にはチベットの人々への人権状況を改善するよう呼びかけてきたところだが、残念ながら改善がなされていないという中において、(中略)、これからも一議員として議連の皆さまと共に国際社会と連携しながらチベットの状況を改善するために努力をしていきたいと思う」と熱意を示していた。そんな安倍氏の後ろ盾もあり、チベット、ウイグル、南モンゴル、香港の人権問題に関する「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が2022年2月に衆議院で採択され、同年12月に参議院で採択された。
また、中国による人権問題の議連は複数あるが、同年同月には、かねてから横の連携が必要だと訴えてきた自民党の古屋圭司衆議院議員が中心となり、「中国による人権侵害を究明し行動する議員連盟」を発足させた。焦点を「中国による人権侵害」に明確に位置付けたこの議連の会長は古屋圭司氏で、南モンゴル議連会長の高市早苗氏、チベット議連会長の下村博文氏、人権外交を考える議員連盟会長の長島昭久氏がそれぞれ会長代理に就任した。役員は超党派で、70名近くの議員が就任している。日本はこのように、議連の仕組みも、取り組みも、しっかりと存在しているのだ。
長尾敬衆議院議員(当時)の働きかけにより実現
それだけでなく、チベット人の生活の具体的な支援も既に行っている。熱心なチベット支援者であり、当時チベット議連事務局長であった自民党の長尾敬衆議院議員(当時)の働きかけにより、日本政府も、外務省が政府開発援助(ODA)資金を助成する形で、亡命チベット人が多く住むインドの北部2州(ヒマチャル・プラデシュ州とウッタラカンド州)の上下水道の敷設や公衆トイレの建設などを実施し、新型コロナの影響で遅れは生じたものの、2022年9月に完成した。政治上の正式な位置付けはインドへのODAであるが、実際の支援場所はいずれもインドにおいてチベット難民が暮らす集落であり、実質的なチベット支援だった。
なお、このヒマチャル・プラデシュ州にはチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が居住し、チベット亡命政府が拠点を置くダラムサラもあり、亡命チベット人たちの中心的な拠点だ。このODA支援の内幕と課題については、ODAの企画から実行に至るまで深く関わった筆者の夫である石井英俊(インド太平洋人権情報センター代表)が、月刊『Hanada』2023年3月号に「外務省がひた隠すチベット〝秘密〟支援」と題して書いているので、ぜひ読んでいただきたい。
チベット支援者によるキャンペーン画像
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