川勝知事の「嘘」の根源は静岡県庁の機能不全|小林一哉

川勝知事の「嘘」の根源は静岡県庁の機能不全|小林一哉

新年早々、川勝知事はリニア妨害宣言をし、リニアにとっては苦難の一年になるだろう。 なぜ、川勝知事は、平気で「嘘」を繰り返すのか――。


静岡県庁の怠慢

今回の「リニア問題は2037年までに解決すればいい」はどうか?
 
まず、昨年12月県議会で、川勝知事は「リニア問題の解決策は『部分開業である』」と断言した。「開通できる状況になった区間から開通させることが解決策となる」などと説明した。

当事者のJR東海が否定しているのに、事務方は、川勝知事の「部分開業」論を県の公式見解とした。
 
事務方は、「事実」か「虚偽」かお構いなしで、川勝知事の主張をそのままに発信することが役割だと思い込んでいる。
 
昨年12月26日の会見で、川勝知事は「JR東海は、名古屋間までは2027年までにつくると言っていた。名古屋までは2027年以降とされたが、それ以上伸ばしてはいけない期限がある」として、「全線開通2037年」をJR東海の守るべき最終期限としてしまう。
 
東京・品川、名古屋間の2027年開業は実施計画として、国の認可を受けている。

しかし、静岡工区の着工ができないことを理由に、JR東海は昨年12月に2027年から「2027年以降」に開業変更を申請して、国の認可を得た。
 
2037年大阪までの開業は、JR東海の目標としていただけに過ぎない。
 
名古屋開業を経て、ようやく名古屋以西の着工が始まる。どう考えても、2027年名古屋開業が伸びれば、2037年大阪までの開業も延期せざるを得ないことがわかる。

しかし、川勝知事に掛かれば、「リニア全線開通で2037年は伸ばしてはいけない期限」となり、知事発言がそのまま新聞、テレビで報道される。

1月24日静岡市で開かれたJR東海の会見(JR東海提供)

次から次へと嘘を繰り出し

「リニア問題は2037年までに解決すればいい」は一人歩きしてしまい、県民らに多大な誤解を与えている。
 
JR東海の会見で記者たちの質問が集中するから、丹羽俊介社長はさまざまな知事発言を打ち消すことに躍起となった。
 
このため、JR東海は1月24日、静岡市で記者会見を開いて、報道各社に正確に事実を伝えてもらえるよう要請した。ただ、これが火消しとなるのかどうかわからない。

実際には、昨年の田代ダム案同様に、川勝知事だけでなく、静岡県庁全体の問題だからである。

2022年8月発刊した拙著『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』(飛鳥新社)第2章「静岡県庁のごまかし全内幕」で、静岡県職員らのとんでもない事例を紹介した。

職員たちが率先して、リニア妨害の「嘘」に加担しているのだ。

これではいつまでたっても静岡県のリニア議論は終わらない。

このままでは、ことし1年間も、川勝知事の新たな「嘘」に踊らされ、振り回される。次から次へとびっくりするような「嘘」が繰り出され、リニア問題が解決へ向かうことなどありえない。

リニア開業を遅らせる静岡工区未着工の責任を問われる川勝知事の“悪名”が歴史にしっかりと刻まれるのは間違いない。しかし、それもいつになるのかわからない。

関連する投稿


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

急転直下、辞意を表明した川勝知事。しかし、本当の戦いはここからだ――。


マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

「磐田は浜松より文化が高かった」 また暴言をした川勝知事。しかし、撤回もせず、悪びれる様子もない。なぜ、川勝知事は強気でいられるのか――。


川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

山梨県選出の中谷真一議員が静岡県がゴールポストを動かしていると批判すると、川勝知事はすぐにさま「ゴールポストを動かしたことは一度もない」と反論。 しかし、静岡県の資料を見てみると……。


川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

静岡県のリニア問題責任者を務める副知事による記者会見は、デタラメだらけだった。この記者会見の本当の目的とは――。


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。