日本防衛の要「宮古島駐屯地」の奇跡|小笠原理恵

日本防衛の要「宮古島駐屯地」の奇跡|小笠原理恵

「自衛官は泣いている」と題して、「官舎もボロボロ」(23年2月号)、「ざんねんな自衛隊〝めし〟事情」(23年3月号)、「戦闘服もボロボロ」(23年4月号)……など月刊『Hanada』に寄稿し話題を呼んだが、今回は、自衛隊の待遇改善のお手本となるケースをレポートする。


高級幹部の住居グレードである3LDK

宮古島駐屯地の隊員は、宮古島出身者が720人中35人、沖縄県出身者が70人、九州出身者が約6割となっている。離島の宮古島では十分な賃貸住宅が存在しないため、官舎は無料で光熱費と自治会費だけで隊員たちは居住できる。

駐屯地に一番近い千代田隊舎は2019年に造られ、平良地区は2020年、友利地区は今年完成予定だ。どれも新しく、高級幹部の住居グレードである3LDKと広い。

官舎のエアコンは隊員が自腹で設置していたが、今年から国費でエアコンが設置されることとなった。新しく広くしかも安い官舎は自衛隊員増に効果がある。重要拠点の隊員数を維持するために国も努力しているのだ。

地代等が都心と比較すればかからないなどの理由はあるが、国を守る自衛隊員への敬意は具体的であってほしい。自衛隊員を支える家族もその仕事を誇りに思えるような官舎であってほしい。自衛隊員を応援する人々はそう考えている。その願いが宮古島では実現しているのだ。

広い対面式のキッチンスペースにはレンジフードもついている。老朽化した古い官舎の転居時には、転居の度に自衛隊員の家族が「MY換気扇」を取り外して、次の官舎で再び工事費を出して設置する様子に驚いた。しかし、ここでは一般企業の社宅のようにレンジフードやエアコンがあり、お風呂の脱衣所に洗濯機の防水パンがあった。

当然と言えば当然だが、当然のものが自衛隊官舎にはほとんどなかったのだ。

中村夫妻と天晴君 広いリビングと新しいキッチンの官舎(筆者撮影)

奥様(いくみさん)も、ご主人(翔平さん)も自衛官という仲村家の自衛隊官舎にお邪魔した。日当たりのいい広いリビングに夫妻と赤ちゃんの3人暮らしだ。沖縄で2人は結婚し共に宮古島に異動となった。自衛隊員夫妻の転勤はできるかぎり同じ地域にするという配慮がある。

この官舎から5km以内の上野地区に保育園があり、送迎バスが官舎までやってくる。子育てにはとてもいい環境だ。「お休みはどこで過ごしますか?」と聞くと、「キレイな海でマリンスポーツや釣りをする人が多いです。ウミガメが来る場所で、ウミガメと一緒に泳ぎます」と返事があった。

2人の長男、天晴君はお母さんに抱かれてニコニコしていた。天晴君もウミガメといつか一緒に泳ぐのだろうか。南国の美しい島ならではの余暇の過ごし方だ。

NHK受信料や電気代を「自腹」で支払う自衛隊員の悲哀|小笠原理恵 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/1279

自衛官候補生採用案内には「入隊後は宿舎での生活となります。居住費はかかりません」と書かれているが、果たして本当なのか。電気ポットや冷蔵庫の電気代だけではなく、テレビがないのにNHKの受信料も徴収されていた――。

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