「最終的に都知事を狙っている」
「コップの中の争い」のように見えるこの騒動を本稿で取り上げたのは、党の左派系の本質を印象付ける出来事だったからだ。
立民は憲法改正に後ろ向きで、現実的な外交・安全保障政策を打ち出すことができない。このことに保守系の松原氏はかねて忸怩たる思いを抱いていた。立民は結果として、その松原氏ではなく、日米安全保障条約の廃棄を掲げる共産との連携を狙う手塚氏に軍配を上げたことになる。
中国、ロシア、北朝鮮という専制国家に囲まれている日本は、防衛力や日米同盟を強化し、抑止力を高めるべきであり、それをせずして、どうして国民を守れよう。立民の支持率が低迷し、国民から十分に信頼を得られないのは、外交・安保で現実路線に明確に舵を切っていないからであり、そのことを立民は理解していないのではないだろうか。
立民が生き残りたければ、現実路線にしっかりと舵を切ることである。その役割を担い得る松原氏をみすみす逃し、私利私欲で行動し、左派勢力とがっちり手を組む議員の言いなりになる政党に、良質な人材が集まるとは思えない。
蓮舫氏について党重鎮が「最終的に都知事を狙っている。衆院への鞍替えを狙っているのは箔をつけるためだ」と語れば、別の党関係者は「いやいや、狙っているのは党代表だ」と話すなど、その動向には注目が集まっている。もっとも、手塚氏とともにすっかり「悪者」になってしまった蓮舫氏の鞍替えは、もはや不可能との見方も強まっている。
「死ぬに死にきれない」と小沢一郎
さて、その蓮舫、手塚両氏と連携している小沢一郎衆院議員は、党内グループ「一清会」を結成した。旧民主時代の小沢グループ「一新会」と名前が似ており、筆者にはデジャブ感しかない。
手塚氏や一昨年の党代表選に出馬した小川淳也衆院議員らと「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げたばかりである。
共産との連携に慎重な泉氏を引きずり降ろすためには、有志の会を発足させるだけでは不十分で、小沢氏に忠誠を誓う実動部隊が必要だったのだろう。その実動部隊こそが「一清会」にほかならない。
小沢氏は周囲に「政権交代を果たさなければ死ぬに死にきれない」と漏らしており、小沢氏周辺によると、次期衆院選での政権交代を目指しているという。あまりにも性急な野望と言わざるを得ない。政策そっちのけで、政権交代を目的化した言動は、野合であり、自らが権力を握るための、これまた私利私欲といえよう。
旧民主政権末期に小沢氏は、時の首相である野田氏と消費税増税を巡り対立を深めた。2人は協議を重ねたが、最終的に決裂した。野田氏が小沢氏の意のままに動くことはなかった。小沢氏は側近議員らとともに、党を割り、「国民の生活が第一」という名称の新党を結成した。