中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

モンゴルで起きている現実は明日の日本でも起こる。中国による人権弾圧を20年以上にわたって訴え続けてきた南モンゴル人権情報センターの代表が7年ぶりに緊急来日。今モンゴルで何が起きているのか? 南モンゴルを支援する議員連盟幹事長の山田宏参議院議員と緊急対談を行った。


Getty logo

石井 いま山田先生からラムジャブさんの事件についての言及がありました。この事件については南モンゴル人権情報センターが情報発信をしたことで日本でも一部報道が出て、関心が高まっています。解説をお願いします。

エンフバット 私個人としても、南モンゴル人権情報センターとしても、このラムジャブ・ボルジギンさんとは何年もの間、直接のつながりを持ってきました。ラムジャブさんは、南モンゴルにおける反体制の著名な作家です。『中国の文化大革命』という書籍を出版したために2019年に懲役2年の判決を受けて服役し、刑期を終えたあとも無期限の自宅軟禁とされていました。今年(2023)3月に中国を脱出してモンゴル国に逃げたのですが、5月3日に中国が派遣した警察にモンゴル国において逮捕され、中国に強制連行されてしまいました。いま山田先生が指摘されたように、本来はまさに「考えられない」事件です。独立国であるモンゴル国において、中国の警察が自由に動いているわけですから、異常な話なのです。

特にラムジャブがモンゴル国に行ってからは、私たちは頻繁に連絡を取っていましたし、インタビューも行いました。インタビュー内容は私たちのホームページでも公開しています。

ラムジャブはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通じて亡命を求めていたので、私たちはその手助けをしていました。しかし残念ながら、その取り組みをしている最中に、中国政府は自国の警察をモンゴル国に送り、ラムジャブを逮捕して中国に連れ戻したのです。私たちはラムジャブの健康状態も何も今は全くわかりません。南モンゴルのシリンゴル地域にいるようなのですが、それが刑務所にいるのか、拘置所なのか、自宅軟禁なのかなどは全く分かりません。

わかっていることは、彼に自由が無いということだけです。実は、このラムジャブのケースは、初めてではありません。2009年以降、同じような事件が少なくとも5件はありました。南モンゴルから独立国であるモンゴル国に逃げている人々に対し、中国政府が警察を派遣して逮捕し、連れ戻したというケースです。

山田 その5件がその後どのようになったのか、その捕まった人たちがどうなったのかの消息はわかっているのですか?

エンフバット 最初のケースは、2009年のバッチャンガ氏です。バッチャンガは南モンゴルのオルドス出身で、当時はモンゴル国のウランバートルにいました。バッチャンガはモンゴル・チベット医療学校の校長をしていました。モンゴル国に逃げてきており、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通じて亡命を求めていました。

先ほどのラムジャブのケースと同じなのですが、中国政府が警察を送り、バッチャンガを逮捕・連行しました。この時、中国の警察は、何とモンゴル国の警察と一緒に、ウランバートルのUNHCRのビルの前でバッチャンガを逮捕し、彼の妻と娘と一緒に中国に連れ去りました。UNHCRのビルの前というのが、異常性を際立たせています。その後、バッチャンガは中国で懲役3年の刑となり服役しましたが、刑期を終えた後の彼がどうなっているのかは全く分かりません。その事件が起きた2009年のとき、バッチャンガの娘はまだ9歳でした。そのためこの娘さんはそのときのショックが元で非常に深刻な精神病を患ったということを聞いています。バッチャンガの健康状態についての情報は何もありません。

一般市民は反中だが、政府もメディアも親中

Getty logo

関連する投稿


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

ウクライナ戦争が引き起こす大規模な地殻変動の可能性。報じられない「ロシアの民族問題というマグマ」が一気に吹き出した時、“選挙圧勝”のプーチンはそれを力でねじ伏せることができるだろうか。


ナワリヌイの死、トランプ「謎の投稿」を解読【ほぼトラ通信2】|石井陽子

ナワリヌイの死、トランプ「謎の投稿」を解読【ほぼトラ通信2】|石井陽子

「ナワリヌイはプーチンによって暗殺された」――誰もが即座に思い、世界中で非難の声があがったが、次期米大統領最有力者のあの男は違った。日本では報じられない米大統領選の深層!


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)


なべやかん遺産|「ゴジラ×コング 新たなる帝国」

なべやかん遺産|「ゴジラ×コング 新たなる帝国」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「ゴジラ×コング 新たなる帝国」!


【今週のサンモニ】『サンモニ』コロナ報道を振り返ってみましょう|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』コロナ報道を振り返ってみましょう|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

「海自ヘリ墜落、2機が空中衝突」(4月20日)、「手榴弾爆発で20代の隊員1人死亡」(5月30日)などトラブル続きの自衛隊だが、最高幹部階級への登竜門である選抜試験でも不正が発覚した――。