海外のスラムを歩いたときの緊張感
その後、車は住宅街を進んだ。一見するとどこにでもある下町の住宅街という趣だった。その中をクルド人らしき、中東系のふくよかな女性たちがベビーカーを押したり、子供乗せ自転車に乗って歩いていたりしている。とにかく女性ばかりが目立つ。
公園にあるというゴミ集積所に行くも、問題になっているという不法投棄は見当たらない。
「片付いているのは、誰が何を汚しても町会の人がマメに片付けるからです」
《日々、ゴミ捨て場の片付けを行っている町会の人たちの努力には頭が下がる》
(撮影:筆者)
そのうち車は、クルド人が経営しているマーケットにさしかかった。向かいには水タバコのバーが見える。マーケットの入口には屈強そうなクルド人らしき中東系の男性が数人いて、奥富氏の車にするどい視線を向けてくる。治安がメタメタの海外のスラムを歩いたときの緊張感を一瞬感じた。今にも襲いかかってきそうだ。
彼らの彫りの深い顔つきに、過度に怖さを感じてしまっているだけなのだろうか――。結局、車は何事もなく車道へ出た。すると奥富氏は僕に注意を促した。
「爆音が聞こえるでしょう。あの改造車がそうです」
異様な重低音を響かせる改造車がすぐ前を走っている。エンジンがうなりをあげて、急加速して右折していった。速くて追いつけない。
「やることなすこと乱暴すぎて、スピード出しますからね。何人も轢かれそうになってます。実際、轢かれてる人もいるし。轢かれたらもうほとんどひき逃げですから」
無免許・無保険の悪質ドライバーが頻繁に現れるエリアを通って通学させる子供たちの親は、気が気でないだろう。
(つづく)
《目撃した暴走車は撮影できず。この写真は筆者が目撃した車とは別》
(写真:読者提供)