日本共産党の大いなる矛盾「自衛権は認めるが、常備軍は認めない」|小笠原理恵

日本共産党の大いなる矛盾「自衛権は認めるが、常備軍は認めない」|小笠原理恵

日本共産党が一貫した護憲政党であったと考えている人は多いが、実は憲法制定時に猛反対したのが共産党である。つまり、「憲法9条を守れ!」ではなく、「憲法9条を変えろ!」と主張していたのだ。なぜ共産党はこれを転換したのか。(サムネイルは日本共産党公式YouTubeより)


「180度立場を変えたのは自民党だ」

日本共産党の赤嶺政賢議員はこの質問に答え、共産党こそが当時、憲法に反対し自衛権を認めていたことを明かした。
 
「私たちは戦後の日本の憲法の議論が起きた時に日本共産党自身が国民主権や平和主義の憲法案を提案しております。現行憲法の9条の下で解釈を変えたのは当時の吉田茂内閣、今の自民党であります。私たちは解釈は変えていません。それは先ほど玉木(雄一郎)先生から当時の吉田首相は9条でさえ自衛権を認めていなかったとおっしゃっていましたよね? 私たちは独立国家であれば自衛権は明記すべきだと。9条に自衛権すらないとする政府の解釈は間違っているということで反対をしたのであります」

赤嶺氏は自民党が自衛権すらないと言っていたのに、180度立場を変えて9条で自衛権を認めるという解釈にしたと指摘している。

このやり取りを聞いていた筆者は首をかしげてしまうしかない。共産党の主張通りに自民党が主張を変えて自衛権を認めたのなら、お互い同意見だから改憲に向かえばいいのではないか?

しかし、赤嶺氏はこう発言した。

「自民党が180度立場を変えて自衛権を9条で認めているとしました。その上で常備軍を持つことさえ合憲にするというような立場になりましたので、私たちはもちろん常備軍を持ってやるというようなことには戦力の不保持の立場から言ってもそれは反対であると」

この赤嶺氏の発言をまとめると、独立国家であれば自衛権は明記すべきだが、常備軍を持つことは許さないということになる。では、その自衛権の実力行使は自衛隊以外の誰がするのだ? 
同盟軍である在日米軍に頼るのだろうか?

「日米安全保障条約廃棄」「自衛隊解消」を掲げる共産党がそんなことを許すはずがない。現に赤嶺氏は「アメリカの言うなりになるな」とも発言している。常備軍の保持は認めないが自衛権を認める共産党は、ではどうやって我が国を「自衛」するつもりなのか。まさか中国の人民解放軍やロシア軍に守ってもらおうなどと考えているわけではないだろう。

務台氏の質問は護憲の立場をとる共産党の核心をついた発言であった。少なくとも、共産党は自衛権を認め、改憲を目指したことのある政党であったことを認めた。それならば、現在の自衛隊をどういう立ち位置にするのかという落としどころを議論すれば全会派一致して改憲の立場に変わる可能性が見えてきたのではないか。

憲法改正に一筋の光が見えた瞬間であった――。

自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う(Kindle版)

月刊『Hanada』2023年6月号

関連する投稿


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

本日は安倍晋三元総理の命日。安倍元総理が凶弾に倒れてから2年を迎えた。改めてご冥福をお祈りするとともに、非道な暗殺を満身の怒りをもって非難する。


辺野古の反基地運動には極左暴力集団が入り込んでいる|和田政宗

辺野古の反基地運動には極左暴力集団が入り込んでいる|和田政宗

6月28日の午前10時過ぎ沖縄県名護市安和で、辺野古の反基地運動により警備員に死者が出てしまった。反基地運動の活動家たちは、これまでも走行しようとするダンプカーの下に入り込むなど危険な行為を繰り返していた。そして、今回、それを制止しようとした警備員が亡くなったのである――。


憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。