護憲政党・共産党に投げかけた質問
日本国憲法は1947年5月に施行されてから76年目を迎えた。施行当時から社会情勢や安全保障環境は劇的に変化をしている。法律と同じく憲法も時代に合わせて見直しが必要だが、日本国憲法改正のハードルは高く、一度も改憲されたことはない。
憲法は国の大黒柱であり根幹だ。憲法が現状と乖離すれば、国の土台そのものが揺らぐことになる。
特に近年の安全保障環境の変化は激しく、台湾有事に備えた法整備、防衛力強化が課題である。自衛隊は諸外国の「軍」と違い、憲法でがんじがらめに縛られ、実力行使が難しい。憲法改正は避けて通れない道だ。
2007年、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立し、衆参両院に「憲法審査会」がそれぞれ設置された。この憲法審査会は憲法に関わる議論や憲法改正原案の審査等を担う。さらに憲法改正原案を国会に提出することもできる重要な専門機関でもある。戦後、国会では、長い間、憲法を議論するための専門の機関がなかった。
3月29日、衆院憲法審査会に関し「毎週開催はサルのやることだ。蛮族の行為、野蛮だ」と立憲民主党の小西洋之議員が発言し、参院憲法審査会の野党筆頭幹事から更迭された。改憲派と護憲派の駆け引きが続くなか、4月20日、衆院憲法審査会で自民党・務台俊介議員が斬新な質問を護憲政党・日本共産党に投げかけた。
共産党はなぜ護憲政党に転換したのか
そもそも、共産党が一貫した護憲政党であったと考えている人が多く、地元の有権権者に話をしてもほとんどの人がそのことを知らないと務台氏は発言の冒頭部分で説明し、こう続けた。
「核武装を放棄し大幅軍縮を実現した挙句、ロシアの侵略を招いたウクライナ戦争を目の当たりにするなかで、77年前の野坂参三・日本共産党議長の指摘(著者注:「憲法9条は一個の空文にすぎない。我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある。それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならない」)は、今日の観点から見て実は慧眼のようにも思われます」
「だからこそ共産党の考え方の転換の背景を理解させていただくことは今後の憲法審査会の噛み合った憲法議論の土台になると思います」
「一昔前の共産党は自衛のための軍隊を持つことは国家にとって当然の権利だと考えていたけれども、東西冷戦のなかで米国が共産主義の脅威に対して日本を極東における共産主義の防波堤とすべく自衛隊をその実力組織として位置づけるなかで、当時の共産党は自衛隊の存在は日本における共産主義革命の支障となると考え、その存在を違憲無効と位置づけるに至った経緯があるという説明を知り合いの歴史家から受けました」
「それが果たして正しい理解なのか? それこそ当事者である共産党の見解をしっかり伺いたく存じます」
ロシアのウクライナへの軍事侵攻により、改めて国連安保理が機能不全に陥っていることが白日の下にさらされた。民族の独立を真摯に考え、自衛権を認めよと過去に共産党が考えていたのなら、再び変わる可能性があるのではないかという建設的な質問だった。
自民党、日本維新の会、国民民主党は憲法改正の提言を公表し、各々参議院選挙においても憲法改正に言及している。国民の憲法の在り方への意識が高まっている今、建設的な憲法議論で具体的な検討の段階という、次のステージに移行する調整をお願いしたいと務台氏は結んでいる。