日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」「中埜家に日本国憲法は関係ない」。日本が誇る大手食品メーカーが、婿に対してとんでもない人権侵害を行っていた――。2022年8月号に掲載され、大反響を呼んだ記事を特別無料公開!


離婚が絶対条件との脅し

大輔さんは毎日、子育てをしながら、今後どうすればいいのか、どうすれば妻子を守れるのか、必死に考え続けた。そして、彼は重大な決断を下した。

それは、日本に一時帰国し、「養子縁組届へのサインを躊躇したことへの謝罪、そしてミツカンの退職を伝え、その代わり、家族だけは守らせてください」と、和英氏・美和氏に直訴することであった。大輔さん自身、責められる落ち度はなかった。しかし、謝ることで家族が守れるならそれでいいと思ったのだ。

2014年12月15日、ロンドンから日本に帰国。ミツカンが本社を置く愛知県半田市に単身、出向いたのだ。面会場所に指定された会議室で大輔さんは美和氏と会い、そして詫びた。
「いままですみませんでした」

しかし、取り付く島がなかった。逆にこれまでの怒りをまくし立てられ、義母との面談は終了。大輔さんはそのまま会議室に残り、和英氏との面談を待った。30分ほど会議室で待機していたところ……和英氏が部下を従えて登場した。

会議は一方的な内容になった。
「ミツカンには、私はいるなとは言わないけど、お前(仕事)探してこいって」
「イギリスに行って仕事をするな、と俺は言ったのに、仕事をしてたろ! お前!」
「ロンドンの家にお前がいるということは、絶対もうこれから許さない!」

このような苛烈な罵声を浴びせられた。これは要するに……孫の親権はすでに奪ったので、大輔は用済みである。妻子を置いて、家と会社から出ていけ! と命じられたに等しかった。そして、このまま一方的な形で面談は終了した。

「大輔は種馬」だった……

イギリスの自宅に帰ったあと、詳細を報告した大輔さんに対し、聖子さんは慌てた様子で言った。
「『離婚が絶対条件』との脅しに従ったように見せる必要がある。偽装別居(さらに踏み込んで偽装離婚)をするしかない」

「あまりにもリスクが大きすぎる。家族なのに、なぜ隠れて会わなければならないのか?」
大輔さんの目には“問題の先送り”にしか見えず、賛成できなかった。

他方、これに合わせ、聖子さんは次のように提案をした
・家族がいつ引き離されてしまっても連絡を取り合えるように、
・将来の息子に、両親から愛されて育ったという事実を残してあげるために、
・“子育て日記”ブログを残す。
大輔さんは賛成した。

ブログのタイトルは、聖子さんの案で【Secret Family】と決まった。“秘密の家族”との意味のほかに、「何があっても息子と家族は守る」という強い思いを夫婦で込めたのだ。

大輔さんが和英氏・美和氏に会ってから4日後の12月19日、事態はさらに深刻になった。午前9時、ロンドンの自宅に和英氏・美和氏らがやって来て、大輔さん抜きで密談をしたのだ。大輔さんはのちのことを考えて、聖子さんにも内緒でマイクを仕込んでいた。

訪れた和英氏・美和氏は、とんでもないことを打ち合わせていた。
「(大輔は)種馬」
「子どもさえ産まれれば、仕事は終わり」

そして、和英氏は次のように部下に指示をした。
「(大輔を)片道切符で配送センターか工場に」

かつて和英氏・美和氏とK常務は、大輔さんに「養子縁組書類は(大輔を)追い出すための書類ではない。税金対策の書類だ」と説明していた。しかし、この言葉の真意が明らかになる。

「いまの状態は大輔君が○○君(息子)の親権をまだ持った状態のままでございますので、ここで離婚の調停ということに入っていきますと、非常にややこしい話になる可能性が高いと思います」とK常務。続けて、
「最初に決めるべきは養子(縁組)の手続きをする、しないということをご判断いただく」
「うん、すぐ(養子縁組届を役所に提出)する」と和英氏。

別室で発言を聞いていた大輔さんは、愕然とした。
「義父母は最初から“騙す”つもりでサインを強要していたのか……」

関連する投稿


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


なぜ自民党総裁選で青山繁晴さんを支援するのか|和田政宗

なぜ自民党総裁選で青山繁晴さんを支援するのか|和田政宗

9月12日(木)に告示され、27日(金)に開票が行われる自民党総裁選。私が選対事務局長を務める青山繁晴さんは、8月23日に記者会見を行った。しっかりと推薦人20人を9月12日に確定できるよう頑張りたい。(写真提供/産経新聞社)


なぜ政府は南海トラフ「巨大地震注意」を出したのか?|和田政宗

なぜ政府は南海トラフ「巨大地震注意」を出したのか?|和田政宗

初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」に対して否定的な意見も多数あったが、政府が臨時情報を出したのは至極真っ当なことであった。(サムネイルは気象庁HPより)


南海トラフ「巨大地震注意」は至極真っ当な発表だ|和田政宗

南海トラフ「巨大地震注意」は至極真っ当な発表だ|和田政宗

8月8日、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。「国民の不安を煽るだけ」という否定的な意見もあるが、はたして本当にそうなのか。この情報をどう見ればよいか、解説する。(サムネイルは気象庁ホームページより)


最新の投稿


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


【今週のサンモニ】生産性なし、難癖ばかりの「アンチ自民党」放送局TBS|藤原かずえ

【今週のサンモニ】生産性なし、難癖ばかりの「アンチ自民党」放送局TBS|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

とるべき財政政策とエネルギー政策を、アメリカの動きを参照しつつ検討する。自民党総裁候補者たちは「世界の潮流」を本当に理解しているのだろうか?


【今週のサンモニ】「トランプ」と「ハリスさん」の使い分け|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「トランプ」と「ハリスさん」の使い分け|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】データが浮かび上がらせる「元自衛隊員」の姿とは  ミリタリー・カルチャー研究会『元自衛隊員は自衛隊をどうみているか』(青弓社)

【読書亡羊】データが浮かび上がらせる「元自衛隊員」の姿とは ミリタリー・カルチャー研究会『元自衛隊員は自衛隊をどうみているか』(青弓社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!