孔鉉佑駐日中国大使からのお誘い
私たちはこれまでに、どれだけの「命の証言」を聞いてきたことでしょうか。多くの阿鼻叫喚の光景を受け止めたのではなかったか。
関係した議員が取りまとめた国会決議文がどれだけ「工夫」されていようとも、
・中国を名指ししない
・ジェノサイドを謳わない
・人権侵害を認めていない
・法的根拠を持った対抗措置を決意しない
これでは世界には全く響かない。周回遅れも良いところです。響かないどころか、日本の人権侵害に対する課題認識はその程度のものかと、恥ずべきメッセージ性を帯びてしまうのです。
このような諸問題があるから、法律を作らなければならない、その理由を立法事実と言います。立法府における立法事実の存在は必要不可欠です。つまり、国会が結果を出す、立法するためには、人権侵害を政府もしくは議会が事実認定をしなければならないのです。
この一番重要なハードルが乗り越えられていない。欧米各国が人権侵害を事実認定して、政府や議会において対応すべく法整備が整っているのに、なぜ日本だけは一歩も前に進めないのでしょうか。
永田町、霞が関の広範囲にわたって、中国共産党の呪いがかけられているとしか思えません。
国会決議に消極的な与党役員は、「個人的にはやらなければならないと思うが、人権侵害の事実認定ができていないんじゃないかということを外務省は言っている」と口にします。
政府や外務省がそういうならば、各政党として、あるいは衆参それぞれの議会として調査を行い、事実認定すれば良いのですが、思考回路はその手前で停止するのです。
私は2021年4月13日、自民党本部で孔鉉佑駐日中国全権大使と面と向かって直接議論した際、同じ発言を耳にしました。
大使は、私が指摘するチベット、ウイグル、南モンゴル等に対する人権侵害に対して、「そんな事実はない」 「その話は中国では茶番と言われている」 「笑い話になっている」と言い切り、「あなたは新疆に来たことがありますか? なければご案内しますよ。素晴らしいところですから」とお誘いまで受け、そんな事実はない、とあくまでもとぼけ通すのです。
仮にご案内を受けたところで、強制収容所の実態を見せてもらえるはずもなく、行けば「ほら、何もなかったでしょ」と言われるのが関の山。さらには、トラップをかけられて口封じをされてしまうかもしれませんので、丁重にお断りしました。
公明党が最大のブレーキ
日本政府をはじめ、主要政党に対し事実認定させない抗日プログラムが長きにわたり浸透し続け、与党側の神経が麻痺していることを私は確信しました。最大のブレーキを踏んでいるのは公明党幹部です。
今回、新しく設立された議員連盟に、公明党議員の名前は一人もありませんでした。これは公明党の政党としての意思です。この議員連盟への公明党の合流を、特に連立与党を組んでいる自民党側が説得にどれだけ汗をかいたのでしょうか、甚だ疑問です。参加したかった公明党議員もいたと聞いています。
しかし、上層部の指示には従わざるを得ない組織の悲哀。党派を越えた議員一人ひとりの強い意志の積み重ねを貫ける環境は、議員自身たちが構築しなければなりません。
自民党国会議員の皆さんを信用していないわけではないのですが、選挙で支援をもらっている自民党側からすれば、公明党が判断に窮するような提案はできるだけ避けたい、どうしてもその辺の空気感が読めてしまうのです。
議連の総会に出席されていたジャーナリストの櫻井よしこ先生は、「アジアの大国として声を上げろ!」と仰せでした。議連では声が上がるのですが、政府として、議会としての声がまとまりません。これが現実です。
ドルクン・エイサ世界ウイグル会議総裁はこう訴えました。
「習近平の独裁、ウイグルへのジェノサイドが続くなかで、日本が果たすべき役割はたくさんあるはずだ。日本が立ち向かってほしい。中東が中国共産党になびかぬよう、日本が中東に働きかけをしてほしい。中国首脳に対して直接、ジェノサイドのことを言え! 強制労働のサプライチェーンを外せ。強制労働の商品を日本に入れない、マグニツキー法を制定してほしい」
繰り返しますが、これらを実現するためには、政府や国会が事実認定をしなければ、ただの一歩も進まないのです。