新たな議連が設立されたが
2022年12月5日、「中国による人権侵害を究明し行動する議員連盟」が設立され、私も総会に出席しました。チベット、ウイグル、南モンゴル、各議員連盟の会長を中心に、企業が取引先を含めた人権侵害を把握し、予防策を講じる人権デューデリジェンスを進め、海外での重大な人権侵害に制裁を科す日本版「マグニツキー法」の制定も視野に活動する議連です。
設立趣意書は、中国の行動を「常軌を逸した人権侵害」と表現し、「民主主義・基本的人権の尊重・法の支配という共通の価値観を持つ国や団体が有機的に連携して現実を究明し内外に発信し行動する」と明記。これまでに採択された衆議院、参議院の人権状況決議に比べれば、はっきりとした主張となっていますが、主な議員発言者の言葉を振り返ると、不安ばかりが募ります。
「われわれが人権侵害を中国の思うようなかたちにさせないという覚悟が必要だ」
「中国への政府対応で国会や議連が背中を押すことが重要だ」
「ウイグルなど人権等を巡る諸問題について主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求める」
「米国にはウイグル強制労働防止法がある。日本でなんら法整備が進まないのは残念だ」
どれもこれもごもっともなご発言ですが、数年前から同じ言葉を繰り返しているだけと言わざるを得ません。次の一歩がいまだに踏み込めない。その一歩とは、議連の枠組みを越えた衆参両院の意志として、中国による人権侵害に対し強い非難、対抗措置としての法整備を決意し、立法手続きを始めることです。
議連が設立された当日、参議院で「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が採択されました。しかし当初の決議案、骨抜きにされた衆議院決議(2022年2月)、そして今回の参議院決議の変遷を確認すると、不本意ながら、議連の決意を越えたところでは、一歩も進んでいないことが証明できてしまうのです。
「人権侵害」の文言が消失
そもそも、自民党、公明党を除く超党派で了承を得た当初の決議案の表題は、「新疆ウイグル等における深刻な人権侵害に対する非難決議」でした。しかし、人権侵害が人権状況と修正され、それに伴い、文中にあった人権侵害の文言が、すべて人権状況に置き換わったのです。
当初案では、深刻な人権侵害が発生しており、弾圧を受けている人々が国際社会に助けを求め、国際社会もこれを脅威と認識し、強く非難して直ちに中止するよう求めていました。さらに立法府の責任において、救済するための必要な法整備の検討を決意すると宣言し、政府もこれに追随せよという内容だったのです。
これが自公幹部により骨抜きとなり、「弾圧を受けていると訴える人々」と修正されたことにより事実認定を避け、人権侵害を強く非難する文言が消え、深刻な懸念というレベルにテンションが下がり、あくまでも弾圧をしている側の説明責任を求めるに止まっているのです。
立法府が法整備に取り掛かる決意の文言も削除され、議会が政府に対して事実関係に関する情報収集を行うべき、と第三者的表現に修正されました。衆議院決議と参議院決議において、特段その違いを指摘するものはありません。
強いていうなら、日米首脳、G7に加えて、新たに国連人権高等弁務官事務所が人権状況への深刻な懸念を共有したこと、中国という文言がどこにも入っていないので当該国政府と付け加えたこと、この2点だけです。