安保3文書履行に早くも暗雲|太田文雄

安保3文書履行に早くも暗雲|太田文雄

2+2の共同発表は昨年末に政府が決定した安保3文書を踏まえている。沖縄県による下地島空港の「軍事利用」拒否は、民間空港・港湾の利用拡大をうたった3文書の履行に背を向けることを意味する。


住民退避に不可欠な3000m滑走路

台湾有事などの住民退避に使われる大型軍用機が離着陸可能な3000メートルの滑走路を持つ下地島空港を、半世紀以上前の覚書に縛られて使用できないことは沖縄県民にとっても極めて不幸だ。航空機よりも多くの避難民を輸送できる艦船の民間港湾への寄港も沖縄県は事実上拒否している(国基研ろんだん拙稿「沖縄に事実上入港できない海自艦」2022年11月14日)。

わが国を取り巻く安全保障環境は半世紀前と大きく変わった。空港・港湾の管理を国が直接行うことも含め、安保3文書や2+2で決めたことを履行していかなければ、共に戦う同盟国である米国の信頼をも失う。(2023.01.23国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

太田文雄

https://hanada-plus.jp/articles/429

国基研企画委員兼研究委員。1948年生まれ。1970年防衛大学校卒、米海軍兵学校交換教官、ゆうぐも艦長、スタンフォード大学国際安全保障軍備管理研究所客員研究員、米国防大学卒(国家資源戦略修士取得)、第1・64護衛隊司令、在米日本大使館国防武官、統合幕僚学校長を経て情報本部長(約3年)、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院博士課程終了(国際関係論博士取得)、2005年定年退官(海将)。防衛大学校教授兼政策研究大学院大学安全保障・国際問題博士課程連携教授、2013年第二の定年退官。現在国家基本問題研究所企画委員。 著書に『同盟国としての米国』など。

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