北海道も危ない! 約束を守らない〝おそロシア〟|小笠原理恵

北海道も危ない! 約束を守らない〝おそロシア〟|小笠原理恵

「ロシアは北海道に対するすべての権利を持っている」。こう語ったのは、「公正なロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首だ。ウクライナと同様にロシアと領土問題を抱える日本は、ロシアの脅威をも認識し、備えなければならない。


母親は満州で生まれ育ちました。母がいた撫順あたりは戦時中も比較的平和で、物も豊かだったそうです。母の生家は大きな寺で、満人の使用人に可愛がられて幸せに育ちました。終戦後、ソ連兵がなだれ込み、呼応したかのように朝鮮人の暴動が始まりました。そこからが地獄だったと言っていました。

当初、母の寺では逃げて来た日本人を匿っていました。ソ連兵には囚人上がりが多く、あちこちに引き裂かれた日本人の死体が転がっていたそうです。その殺し方は、それは惨たらしいもので人々は恐怖に震えあがっていました。その中に、若い女性がいました。

逃げ出した時には赤ちゃんを連れていたそうですが、泣き声でソ連兵に見つかったらその場にいる全員が殺される――。結局、彼女は乳飲み子を自らの手で殺さざるを得なかったそうです。無残な殺され方をするよりはせめて自分の手で、という気持ちがあったのかもしれません。

中国残留孤児についても母は「日本人ではなく中国人としてなら生きていけるかもしれない」と我が子を泣く泣く中国人に引き渡したケースが多かったと言っていました。せめて命だけは助かってほしい…。多くのお母さんたちがそう願ったのでしょう。

はじめの頃は匿っていた側でしたが、ソ連軍や八路軍の侵攻が進み、結局は母の一家も寺を捨てて逃げることになりました。終戦時、母は12歳。髪を切って顔に煤を塗り、男の子の格好をして逃げたそうです。

もし、ソ連兵に見つかった場合、女性だとわかるとトラックで連れて行かれて暴行や強姦、虐殺されるという話も聞いていました。逃げる途中で小さな妹は栄養失調と衰弱で亡くなりました。混乱の中でたくさんの命が残酷に踏みつけられるさまを、幼い母はたくさん見聞きしたと言います。

遠目に舞鶴港が見えた時は、船中のみんなで泣いたそうです。母には生まれて初めて見る国でしたが、これが日本だと心の底から嬉しかったとうっすら涙を浮かべていた顔を今でも覚えています。

「戦争は負けたらダメだ。外国には住むな。外国人を絶対に信用するな」

これは生前の母が繰り返していた言葉です。当時は過激に思っていましたが、今思えばそんな悲痛な経験があってこその発言だったのだなと思います。

ロシアと休戦協定は結べない

Getty logo

連日報道されるウクライナの惨状は、この体験談に重なる。首都周辺のブチャでは多数の民間人の死体が見つかった。マリウポリで発見された3つの集団墓地でも同様だ。ドネツク州では奪還したリマンでも、多くの人が殺害されたと見られる2つの集団墓地を発見したという。

ソ連がロシアに変わっても、国際法では認められない民間人の大量虐殺が今もなお行われている。ロシアは約束を守る国ではない。休戦協定が結べない理由はここにある。

ウクライナは全てのウクライナ国民を救う最善の方法として、武力でロシア軍を追い出す選択肢を選んだ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、日本も自らのことと考え、憂慮しなければならない事態だ。戦争は望まなくても一方的に開始されるものであり、相手が常任理事で核保有国だと国連や欧米諸国も直接的な軍事介入を躊躇すると証明された。

ウクライナと同様にロシアと領土問題を抱える日本はロシアの脅威をも認識し、備えなければならない。長年に渡る防衛予算不足で、兵站、装備、人材とあらゆる面で自衛隊は脆弱だ。反撃能力(敵地攻撃能力)などもほとんどない。

ロシアに破壊の限りを尽くされる恐怖を現実に経験しないよう、可及的速やかに防衛力を立て直すしかない。

自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

関連する投稿


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。