岸田政権の〝増税〟に反対!|和田政宗

岸田政権の〝増税〟に反対!|和田政宗

時事通信は5月19日、『法人税率、引き上げ案が浮上』との見出しで、与党の税制調査会で法人税の実効税率を引き上げる案が浮上していると伝えた――。日本経済の閉塞感が強まっているなか、積極的な財政出動を行わなければ経済は支えられないのに、増税という論が出てくること自体が滅茶苦茶であり、私は明確に反対である。


岸田政権は財政出動を決断できるか

Getty logo

岸田総理は今月イギリスで行った講演で、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や、預貯金を資産運用に誘導する仕組みを創設したいと述べた。これは、個人の金融資産を株式や債券投資などで運用するアメリカでは家計金融資産が10年で3倍、イギリスは2.3倍になっているのに、日本は1.4倍にしかなっていないからである。

日本では2000兆円に達する個人金融資産の半分以上が現預金で保有されており、岸田総理が提案した政策は有効であるのだが、株価が低迷していたら、投資意欲が減退し運用もしにくくなり意味がなくなる。

さらに、注意しなくてはならないのが、物価上昇についてのメディアのミスリードである。先般、4月の消費者物価指数が2.1%上昇(変動が大きい生鮮食品を除く)と発表され、各メディアは物価上昇の危機を煽り立てた。

だが前月3月までのこの1年間の消費者物価指数は、菅政権下での携帯電話料金値下げにより物価が押し下げられた数字と、携帯電話料金がまだ高かった前年度の数字とを比較していた。それが、1年たって一巡し、4月の消費者物価指数は、携帯電話料金値下げ後の数字との比較となった。

これにより、消費者物価指数は大幅上昇となったわけだが、前月3月の消費者物価指数は、携帯電話料金値下げ分を補正すると1.8%の上昇となり、4月の2.1%は急激な上昇というわけではないのである。

なぜこのことを記したかというと、こうした数字を利用して、金融引き締めのため増税が必要だと主張する人たちが出てきかねないからである。

増税への不安感が生じれば、自民党の強い支持世代である現役勤労世代の支持を失い、参議院選挙に大きな影響が出ると考える。すでに安倍政権を支えてきた岩盤保守層20%のうち数%は、岸田政権の外交政策などから自民党支持を停止しているとみられる。

こうした方たちが投票に行かなければ、60%という内閣支持率も、自民党への高い政党支持率も、大きく削られた数字で考えなくてはならなくなる。私は、参議院選挙は極めて厳しい戦いを想定しなくてはならないと考える。

今こそ財政出動で景気を下支えし、反転攻勢に打って出なくてはならない。しっかりと党内で提起していくが、岸田政権は決断ができるだろうか。

月刊『Hanada』2022年6月号

¥ 950

7月号は5月26日発売!

「嘘の新聞」と「煽るテレビ」 Kindle版

関連する投稿


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。