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結論! 朝鮮半島に関わってはいけない 石平

(『結論! 朝鮮半島に関わってはいけない 東アジアと世界のトラブルメーカー』まえがきより)


■半島国家の悲運

本書が編集段階に入った2018年3月27日、北朝鮮の金正恩労働党委員長が北京を電撃訪問したとの衝撃ニュースが世界中を駆けめぐった。そしてそれに先立って、同じ半島国家の韓国国内において、前大統領と元大統領が相次いで裁判にかけられたり逮捕されるというビッグニュースがあった。

二つの半島国家の動きは、常に国際社会の関心の的となっているが、ここではまず、韓国国内の話に目を向けよう。

2018年の平昌オリンピックが終わってからまもなく、韓国前大統領と元大統領に関するビッグニュースが報じられた。

まず同年2月27日、巨額の収賄罪などに問われている前大統領・朴槿恵被告の求刑公判がソウル中央地裁で開かれた。それに続いて3月23日、朴前大統領の前任である李明博元大統領もまた、収賄や横領などの容疑でソウル中央地検によって逮捕された。

わずか二十余日間で、一国の大統領経験者が二人も、収賄などの罪で裁かれたり逮捕されたりするとは、漫才のネタにもなるような奇妙な事態だが、よく考えてみれば、かの国では検察や裁判所の厄介になった大統領経験者は、何もこの二人だけではない。彼らの前任であり先輩である盧泰愚元大統領、全斗煥元大統領にも逮捕歴があり、もう一人の元大統領である廬武鉉は検察に召喚されていた。そして全斗煥は死刑判決まで言い渡され(後に特赦)、廬武鉉は投身自殺という悲惨な最期を遂げた。

韓国の悲運の大統領はもちろんこの5名だけでもない。一応の民主国家としての大韓民国が1948年に樹立して以来、歴代大統領の大半は在任中に殺されているか、そうでなければ退任した後に逮捕されたり自殺に追い込まれたりするのが、むしろ普通の光景である。このような異様な事態を見ても、韓国という国の異常さがよく分かるはずだ。どう考えても、普通の意味での民主主義法治国家ではないのである。

■前大統領に「懲役30年」

韓国の異常さがより端的に露呈したのは、前大統領の朴槿恵被告に対する求刑公判においてである。

前述のように、2018年2月27日、巨額の収賄罪などに問われている韓国前大統領、朴槿恵被告の求刑公判がソウル中央地裁で開かれたが、その中で検察側は何と、朴被告に懲役30年、罰金1185億ウォン(約118億5000万円)を求刑したという。

60歳代後半の年齢の前大統領に「懲役30年」とはいかにも厳しすぎる求刑だが、検察側の陳述によると、朴被告は、最大財閥のサムスングループから約束分を含めて433億ウォン(約43億円)を受け取ったほか、他の財閥からも賄賂を受け取ったり、要求したりしたという。

このほか前政権に批判的な文化人らをまとめた「ブラックリスト」の作成などに関わり、職権乱用や強要があったとされる。朴槿恵は追起訴された分を含め20以上の事案で罪に問われているのである。

それらの罪が事実であれば、朴前大統領による大統領権限の私物化は実に深刻なものである。「民主国家」の大統領であるはずの彼女は在任中、往時の朝鮮王朝の王様と変わらぬ振る舞いをしていた様子が目に浮かぶ。

その一方、朴前大統領への検察の求刑に対して、韓国の野党からは「現政権による政治報復である」との批判も上がってきている。別に逮捕された李明博元大統領にしても、自らの逮捕については「政治的報復だ」と批判している。今の文在寅大統領は、収賄などの容疑で取り調べを受けて自殺した前述の廬武鉉元大統領とは盟友の関係だったから、文政権が出来上がると、廬元大統領を自殺に追い込んだ前の政権に対する報復が始まったわけである。勿論このままいけば、今の文大統領もその退任後、次の政権によって監獄へと送り込まれる公算大である。

このようにして韓国という国では、現役の大統領が権力を握ると、国家そのものを私物化してしまい、ほしいままの収賄や横領を行うが、権力の座から一旦降りれば、直ちに別の権力者からの報復の標的となって凄まじい制裁を受ける。だからこそ、この国の歴代大統領はほとんど例外なく悲惨な結末を迎えることとなるが、このような国は、どう考えても健全な近代民主国家であるとは思えない。民主国家の形をとった往時の李氏朝鮮そのものである。

■悲惨な結末を招く権力闘争

しかし一体どうして、21世紀の現代になっても、かの国の政治は依然として李氏朝鮮の前近代的体質のままなのか。この国とこの民族が、根本のところで一向に進歩しないのは一体なぜか。東アジアの政治を考えていく上で、実に興味深い問題の一つである。

前述した歴代大統領の悲惨な結末は、韓国政治のもう一つの注目すべき特徴を示している。すなわち、かの国における権力闘争の激しさである。

政治の世界における権力闘争はどこの国にもあるが、諸民主国家の中ではやはり韓国のそれが格別に激しいと言わざるを得ない。初代大統領の李承晩は国内の政争に敗れて国外亡命を余儀なくされ、2代目大統領の尹潽善は退任後に軍事政権に反抗したことで実刑判決まで受けた。この尹潽善を弾圧したのは朴正熙政権であるが、当の朴正熙大統領は側近であるはずのKCIA(中央情報部)部長によって暗殺された。朴正熙大統領の後を継いだのは崔圭夏であるが、大統領の座に座って1年も経たないうちに、全斗煥などの軍人による軍事クーデターによって失脚させられた。

その後、全斗煥と盧泰愚の2代にわたる軍事政権が続いたが、金泳三を大統領とする文民政権が誕生すると、今度は軍事政権の指導者や関係者に対する大規模な粛清が断行され、全斗煥と盧泰愚の2名はまさにこのような文脈の中で逮捕されることとなった。

こうしてみると、韓国における権力闘争はまさに血で血を洗う「仁義なき戦い」であることがよく分かるが、同じ民族の北朝鮮にも、なおさらあてはまる。金日成・金正日・金正恩と続く金王朝の歴史上、政治的粛清によって消された政権内幹部の数は数えきれないが、3代目の金正恩の行った粛清だけを見ても、権力闘争の恐ろしい実態がよく分かる。

金正恩が2011年11月に権力の座に着いてからの6年余り、殺された高級幹部のリストには朝鮮人民軍参謀長の李英鎬、その次の参謀長の李永吉、国防委員会副委員で実質上のナンバー2だった張成沢、玄永哲人民武力部長などの名が含まれている。そのうち玄永哲の場合、彼に対する処刑はなんと、高射砲によって人体を跡形もなく吹き飛ばすやり方で行われたという。そして周知のように、粛清の果て、金正恩はついに、肉親である兄・金正男にまで手を出し、毒殺したのである。

韓国にしても北朝鮮にしても、朝鮮民族は一体どうして、それほどまでに「内ゲバ」がお好きなのだろうか。そして彼らの内部闘争はなぜ、それほどの激しさと残忍さを持って行われているのだろうか。

日本の場合、例えば明治維新の後、賊軍の将の徳川慶喜が誰よりも悠々自適な余生を送っていたことは周知の事実であるが、このような日本に暮らすわれわれにとって、「南北朝鮮」で行われてきた恐ろしい権力闘争は、別世界、異次元のものであろう。しかし彼らはなぜ、同じ民族同士の血を見るのがそれほど好きなのだろうか。

■周辺国を「巻き込む」のが朝鮮半島の伝統

朝鮮民族の内ゲバは、実は、周辺国のわれわれにとって他人事ではない。朝鮮半島の歴史を見ていると、自分たちの内紛あるいは内戦に、周辺国や他民族を巻き込むのはむしろ半島民族に一貫した習性である。遠い昔の古代史上、日本が朝鮮半島の戦争に巻き込まれて「白村江の戦い」で大敗を喫した例があるが、この戦いにおいて日本軍を打ち破った中国の唐王朝も実は、半島における新羅と百済の内戦に巻き込まれた立場だった。

そして近・現代史上、朝鮮半島で起きた最大かつもっとも壮絶な戦争は1950年代の朝鮮戦争であるが、金日成が起こし、李承晩が拡大したこの同じ民族同士の戦争に、結局は米中両大国が巻き込まれ、莫大な犠牲を払って、朝鮮のために戦うこととなった。

このように半島の人々が何らかの内紛を展開していく際には、周辺国を含めた諸外国を自分たちの起こしたトラブルに巻き込むことを決して忘れない。そしてその都度、彼らの巻き込みによって、周辺国と民族は多大な被害を受けることになるのだ。

もちろん現在でも、朝鮮民族はこの「巻き込み」の伝統をきちんと受け継いでいる。例えば北朝鮮の金正恩労働党委員長は、トランプ大統領との首脳会談を決めておいてから、中国にも電撃訪問して習近平国家主席を味方につけて米国を牽制する鮮やかな外交を展開し、世界をあっといわせたが、これでかつての朝鮮戦争の時と同じように、米中両大国が「朝鮮問題」にうまく巻き込まれ、金正恩のてのひらの上で踊る格好となった。米中両国は今後、どれほど大きなコストを払っていくことになるだろうか。

こうして見ると、今になっても王朝時代の前近代的体質をひきずりながら内部の権力闘争や内紛に明け暮れ、時に周辺諸国をその内輪もめに巻き込んでいくのは、まさに朝鮮半島の国々と朝鮮民族の不変の習性と行動パターンであることが分かる。問題は、われわれ周辺国が今後、このような迷惑千万の半島民族とどうやって付き合い、彼らの起こすトラブルにどう対処していくべきか、という点である。

内ゲバと巻き込みがお好きな彼らの正体と本質をきちんと把握せずに、彼らの起こすトラブルに迂闊に巻き込まれていたら、大きな災いが降ってくる。特に今、北朝鮮が核兵器を保有し、われわれ周辺国に多大な脅威を与える一方、韓国が慰安婦問題を利用して世界規模の歴史戦に日本を巻き込みつつ、北朝鮮の核保有に手を貸そうとしている状況下で、半島問題の本質と半島民族との付き合い方を真剣に考えておくことほど、われわれにとって喫緊の問題はない。半島の歴史と半島民族の習性をきちんと見極めた上で、半島との関係性を根本から見直すべき時は、まさに今であろう。

(画像:韓国大統領府HPより)

■「できるなら、朝鮮半島と関わらないことに越したことはない!」

このような時期における本書の出版は、まさに時宜を得たものであるが、この本を一言で要約すれば、元中国人でいま日本人になった筆者が、「中国」と「日本」という二つの視線から、朝鮮半島の歴史と半島問題の本質についての長年の考察を集大成して一冊にまとめ、上梓したものである。

そして「石平の朝鮮問題考察の決定版」というべき本書の意図は、まさに上述の問題意識から出発して、「抜けられない前近代」、「止むことのない民族同士の内ゲバ」、「習性となった周辺国の巻き込み」という三つの側面から、朝鮮民族の恐ろしい民族性と行動パターンに対する綿密な考察と解明を行い、いつでも降りかかってくる可能性の高い「半島の災い」に対して、真剣な警告を発することである。

「できるなら、朝鮮半島と関わらないことに越したことはない!」、それこそが本書の出した最終的な結論であり、朝鮮半島の歴史をつぶさに考察した筆者の心からの叫びでもある。

このような「極論」としての結論に至るまで、私は朝鮮半島の歴史に対して、どんな考究をしたのか。それこそ筆者がこれから本書の中で、鮮明かつリアルに記していくべきものであり、読者の皆様はきっと読み進めるうち、驚きと知的な愉しみを見出していただけると確信している。

本書を手にとっていただいた読者の皆様に心からの御礼を申し上げる。
 
平成30年初春 大阪市阿倍野区界隈、独居庵にて  石平

 

 

著者略歴

  1. 石平

    評論家 1962年、四川省生まれ。北京大学哲学部を卒業後、四川大学哲学部講師を経て、88年に来日。95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。2002年『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)刊行以来、日中・中国問題を中心とした評論活動に入る。07年に日本国籍を取得。08年拓殖大学客員教授に就任。14年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。著書に『韓民族こそ歴史の加害者である』(飛鳥新社)など多数。

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