核議論タブー視で失ったもの
実は本書で最も驚いたのは、北朝鮮が米中露の核戦略に精通しており、「日本の専門家も敵わないのではないか」「むしろこちらの方が足元を見られているのではないか」という高見澤氏の指摘だ。日本での核議論がタブー視されてきたことで失ったものは大きい。
現在、ウクライナ侵攻によって改めて懸念される日本の安全保障体制や核抑止の議論について、ウェブ上では「タブー視」の風潮を乗り越え研究を重ねてきた学者・専門家たちの良質な解説動画が次々と公開されている(例「NATOの核共有:その歴史と現状」下記参照)。
核について真剣に考えたいとお思いの方々こそ、結論ありきのお手軽動画ではなく、骨太な「講義」を受けたうえで、真剣に核議論に向き合うべきだろう。もちろん、本書が一助となることは言うまでもない。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。