核議論するならまずはここから! 兼原信克・太田昌克・高見澤將林・番匠幸一郎『核兵器について、本音で話そう』(新潮新書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「核共有ってどうやるの?」西ドイツの事例

「核共有(ニュークリア・シェアリング)」について、いわゆる保守論壇では2000年代末ごろからちらほらと聞かれるようになっては来ていた(特に元空幕長・田母神俊雄氏の指摘による)。

が、具体的な中身や、どんな仕組みや経緯で共有が成り立っているのか、この15年余りほとんど説明されることはなかった。

本書では、日本と並んで戦後「仮想潜在核武装国(核武装の懸念あり)」とみなされていた西ドイツの事例を、岩間陽子氏の『核の一九六八年体制と西ドイツ』(有斐閣)を引く形で紹介。西ドイツに核を持ち込みたかったアメリカの意向と、それを受け入れつつ「西ドイツ領内から核を使う場合、アメリカは西ドイツの意見を聞いてほしい」と要求し、共有体制が出来上がった経緯が詳述されている。

「シェア」「共有」と言っても所有権の半分をドイツが有しているわけではない。あくまでも核自体はアメリカのものであり、ドイツ領内に置かれた核弾頭も、常時米軍が管理している。

仮にその核を使う際には、「アメリカの核を、ドイツのミサイルか爆撃機に乗せて投下する」。つまり「共有(シェア)」されているのは核そのものというよりも核使用の責任というイメージだ。

日本に置き換えれば、こういうことになる。

「かつて日本に原爆を投下したアメリカの核を、日本の自衛隊機に乗せて自衛官が他国に投下する」

合理的に考えれば「二度と核を落とされないために必要な体制」ともいえるが、心情として引っ掛かるという人も少なくはないだろう。これまでどちらかと言えば「核共有で抑止力を高めるべし!」派だった筆者(梶原)も、これを知って「……核共有、本当にやっていいのか?」と立ち止まったのが正直なところだ。

核の一九六八年体制と西ドイツ

イチかゼロかの核議論はもうやめよう

こうした論点も、歴史的経緯その他についての知識を得、議論を経なければ浮かび上がってこないものだ。本書では各論者とも、まさに「本音」で議論しているため、さまざま論点が浮上している。

また、最も立場や意見が異なる兼原氏と太田氏の間で摩擦熱が生じているかの場面もある。

太田氏は核共有について「被爆国である日本の道徳的権威が傷つけられかねない」と述べるなど、慎重姿勢ではあるが、賛成の視点からは気づかない「仮に日本が核を持った場合にどのような(負の)影響が周辺に広がるか」という視点を提示してもいる。たとえば、日本の核共有によって中国の核戦略に「塩」を送ることになり、さらなる増強を許すのではないか、など。

こうした懸念が妥当であるかどうか、立場は分かれる。だがこれこそが、異なる意見を持つ者同士の議論の醍醐味だろう。意見が異なる相手との議論を経る中でこそ、一つの物事を多角的に検証することができる。

単に賛否を言うだけではない。ましてや「核議論など危険だ」と封殺するのでもない。本書も、太田氏のような視点があるかないかで、その意義が大きく変わっていたに違いない。イデオロギーだけが判定材料というような、ゼロかイチかのカウンターの打ち合いでは意味がないのだ。

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