「伊藤詩織」問題 金平茂紀と望月衣塑子の正体|山口敬之

「伊藤詩織」問題 金平茂紀と望月衣塑子の正体|山口敬之

「犯罪事実があった」とする伊藤詩織氏の主張は、検察と検察審査会によって、2度にわたって退けられた。日本の法制度上、刑事事件としては完全に終結し、伊藤氏の私を犯罪者にしようという目論見は失敗に終わったのである。ところが、私に一切取材依頼や問い合わせを行わないで、新聞やテレビで発信をしたり、記者会見で発言をしたりした人物が、少なくとも2名いる。そのうちのひとりが金平茂紀であり、もうひとりが望月衣塑子である――。(初出:月刊『Hanada』2018年1月号)


金平に記者を名乗る資格などない

そして、刑事事件として完全に終結したあとも、伊藤氏の主張が正しいという立場をとるのであれば、何らかの不正や不適切な処理が行われたということを主張しているに等しい。もし記者としてあえてその立場をとるのであれば、行政や司法の場でどのような不正が行われたのかを徹底的に突き詰めるのが記者の仕事である。

ところが、金平は何かそういう取材をしたのか。そもそも私にすら取材をしていないのだから、「徹底取材」など望むべくもない。逆に言えば、「伊藤氏の主張が間違っている可能性はないか」という観点について全く取材をせず、全く思いをいたしていないのが金平なのである。

また、TBSワシントン支局長にはインターンを雇う権限はなかったのではないかとか、当時、私はすでに支局長解任が内定していたのではないかという、私の人格を貶めるために流布された根拠に基づかない情報があったが、これが事実でないことは、ワシントン支局長経験者である金平は容易に確認することができた。

たとえば、当時、私は来る大統領選に備えて、支局の情報収集能力を強化するために支局員の役割分担の変更を計画していた。具体的には、実際にリサーチ能力のあるインターンを複数迎え入れていたし、撮影助手に特化した契約社員をよりリサーチ業務に重点を置いた陣容に変更しようとして、東京から派遣されていたカメラマンにも相談していた。

金平であれば、当時の支局員に電話一本すれば確認できることばかりだ。しかし、私の主張を補強する事実については、私本人への取材はおろか、周辺取材すら金平は一切していないのである。

事実確認の取材すら一切行わず、記者会見の場で「元同僚、部下が詩織さんにとった行動というのは、私は理解できないくらい怒りを覚えています」と述べる人物が、記者を名乗る資格などないことは自明のことである。

「安倍晋三は最も政治家にしちゃいけない人間」

では、金平はなぜ、私サイドの取材を一切しないまま記者会見で発言したのだろうか。伊藤氏の会見に参加し、その場の雰囲気に流されて、記者として為すべき基本動作をあえて放棄したのだろうか? TBSでの金平のこれまでの行動から見て、私はそうではないと考えている。

私は1990年代前半のロンドン支局時代に、モスクワ支局長を務めていた金平とロシアや欧州の現場でよく一緒に仕事をした。仕事が終わった深夜、モスクワ支局の片隅にある通信社のチッカー(通信社情報が巻紙に印刷されて出てくる機械)を黙々と確認している金平の後ろ姿を覚えている。

井戸端会議の主婦ならいざ知らず、30年以上の取材経験を持つ金平が、伊藤氏の2回の記者会見だけで記者としての基本動作を忘れることはありえない。金平が盲目的に伊藤氏に肩入れするには、別の狙いがあると見るのが自然である。この推論を検証するために、私はひとつの事実を提示する。

金平は2005年5月に、TBSの報道局長となった。この直後、私は金平と話をする機会があった。ロックバンドのポスターを貼り、不快な香りのするお香を焚いた報道局長室で金平と向き合った私は、当時、政治部で外務省を担当していたこともあり、北朝鮮情勢などについて意見交換するつもりだった。ところが、金平は開口一番、こう言った。

「安倍晋三っていうのは、最も政治家にしちゃいけない人間なんだよ」

唐突におかしなことを言うので、私はその真意を訝りながらこう尋ねた。
「直接取材したことがあるんですか?」
「あるわけないだろ。ろくな人間じゃないのは、あの弛んだ顔だけ見てもすぐわかる」
私は外務省担当になる前、幹事長を務めていた安倍晋三氏の番記者をしていた。
「どこがそんなに気に入らないんですか?」
「あんな極右政治家が官房長官をやっているということだけで、俺は我慢がならないんだよ」

感情を抑えきれない様子の金平の発言は、もはや理解不能だった。金平は社会部記者を経て、「筑紫哲也ニュース23」のディレクターなどを務めていたが、政治部の経験はなかった。直接取材したこともない政治家に対して、まるで不戴天の敵のように怒りを爆発させる金平の異様な表情に、驚いたのを鮮明に覚えている。

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