トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


拍手が鳴りやむのを待って演説を始めた

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7月19日、米国のトランプ前大統領が7月13日の暗殺未遂事件後、初めての演説に立った。15日から始まった共和党大会で大統領候補として正式指名を受けての指名受諾演説であった。

すでに15日には共和党大会に姿を見せており、右耳にガーゼを貼った姿であったが、元気な姿で大歓声と満場の拍手によって迎えられた。そして、7月19日の演説。15日を上回る大歓声と拍手は鳴りやまず、ゆったりと壇上に歩を進めたトランプ氏は、拍手が鳴りやむのを待って演説を始めた。

銃撃事件を受け寄せられた声に感謝をしたうえで、分断の解消と団結を訴えた。「社会における不一致と分断は癒されなければならない。米国人として、私たちはひとつの運命と共通の宿命によって結ばれている。米国の半分ではなく、全ての米国民のための大統領になろうと立候補した」と述べ、「凶悪な攻撃があっても我々はこれまで以上の決意をもって団結する。国民に奉仕する政府を作るという決意は揺るがない」と力強く続けた。

銃撃後の大統領選世論調査では、ロイターが、トランプ氏43%、バイデン氏41%の支持率となった。これは、銃撃以前の両者40%の調査と比べると数字上トランプ氏の支持が増えているが、ロイターは、誤差(±1.5ポイント)の範囲に収まっており、銃撃事件による支持率の大きな変化はないと分析している。

その他の世論調査では、経済誌「フォーブス」が、トランプ氏45%で、バイデン氏42%、経済誌「エコノミスト」が、トランプ氏43%、バイデン氏41%で、いずれもトランプ氏がリードしている。CBSニュースでは、トランプ氏52%、バイデン氏47%で、7月初めの前回調査の2%差から5%差に広がったが、誤差は±2.7ポイントであり、ロイター調査と同様の傾向になっている。

バイデン撤退論が民主党で強まっている

しかしながら、昨年までのバイデン氏がトランプ氏を上回る数字は皆無となり、トランプ氏がバイデン氏を上回る数字ばかりとなっている。テレビ討論会でのバイデン氏の様子や、重要な記者会見での言い間違えの連続などもあり、バイデン撤退論が民主党で強まっている。

絶対に勝てないのなら大統領候補を差し替えるというのは当然の考えであるが、CBSニュースの最新の調査では、トランプ氏とハリス副大統領との対決を想定した場合でも、トランプ氏が51%対48%でリードする結果となっている。

この3%差を誤差の範囲内と見て、逆転できるとしてハリス副大統領に差し替えるのか、それとも他の候補に差し替えるのか。民主党内ではミシェル・オバマ元大統領夫人の待望論もあるが、元ファーストレディーであり弁護士であるものの政治経験は未知数で不安要素が多い。民主党は大統領候補を差し替えるにあたっても、相当な困難を強いられる。

民主党政権継続であれば、現在の外交、安全保障政策が継続されることとなるであろうが、トランプ大統領となれば転換も考えられる。米国における国際情勢の最大の関心は今も昔もイスラエルを中心とする中東であり、極東アジアは2番手以降である。

トランプ氏の前大統領時代を考えれば、極東アジアの平和のために日本が第一に責任を果たすべきであり、さらなる防衛力の向上を求めてくる可能性が考えられる。しかしながら、私はこれは日本が責任をもって国防力の整備と極東アジアの平和のためにリーダーシップをもって尽くすことのきっかけになると考える。

すなわち、対米依存からの脱却を果たし、戦後80年を経て真の独立国家としての役割を果たすことに繋がる。トランプ大統領誕生を織り込んで、今から様々な準備をすべきである。

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