理に適った立憲民主党と共産党の共闘
このように、いざという緊急時に安易に強権を発動して国民を統制するのは、全体主義者の行動パターンに他なりません。民主党政権による東日本大震災への対応もそうでしたが、自己を無謬と考える彼らは、自己の政策が間違えることを想定していないのです。
ちなみに、立憲民主党や共産党がその権力の暴走を危惧している自民党政権は、コロナ禍を通して権力の行使に極めて慎重な姿勢を見せ、個人の自由意志に基づく自粛を対策の前提にしました。4回にわたった緊急事態宣言は、いずれも国民の強い世論に従って発出するに至ったものです。
こうした全体主義政党の立憲民主党と共産党が2021年衆院選で共闘したのは、イデオロギー面からみても理に適っています。両党は、政府のウィズコロナを否定し、ゼロコロナを前提とする給付金・大規模検査を含む2021年度予算の組み換え案を共同提案するなど、すでに政策面でも一体化していました。
なお、彼らは自らを「リベラル政党」と名乗っていますが、これは妥当ではありません。彼らは文化的統制軸におけるLGBTや夫婦別姓にかかわる人格権への関心を強く主張することで、政治的統制軸における自由権を主張しているかのように見せかけているのです。
先に示したとおり、人格権は国家と国民の問題であり、自由権は政府と国民の問題であるので、問題の所在が異なります。ここに大きな【レトリック rhetoric】が存在するわけです。
立憲民主党の泉健太新代表の選出によって、立憲民主党の政治スタンスに変化が生じて共産党との距離を拡げる可能性はあります。しかしながら、共産党がその行動を許容するかは別問題です。
そもそも、共産党支持者に選挙協力だけさせて、当選後無視するようなことがあるとすれば、それは有権者に対する背信行為であり、国民の代表がとるべき行動とは言えません。
その一方で、すでに共産党は、衆院選の選挙区で当選した立憲民主党の議員にとって、なくてはならない存在となっています。2015年、民主党の前原誠司氏は、共産党との選挙協力について「共産党の本質はシロアリ」と発言し、当時の枝野幹事長が謝罪したことがあります。少なくとも来年の参院選までには、この発言の真偽が明らかになるものと考えられます。
安倍政権とリバタリアン政党・維新
日本維新の会 衆院選マニュフェスト2021
自民党政権を経済的観点から小さな政府とするのは大きな誤解で、田中角栄氏が登場して自民党を支配して以来、財政構造改革を明言した橋本政権と小泉政権を除けば、ほとんどの政権が大きな政府であったと言えます。
たとえば、立憲民主党、共産党、そして岸田首相までもが新自由主義と認定する安倍政権は、実際には失業率と自殺率を過去最低レベルに抑えた超リベラル政権であり、政権担当時に中央銀行である日銀は(政府から形式上は独立しているとはいえ)、ETF買いによって国内株式市場の最大株主となりました。
また、タカ派のイメージを植え付けられているなか、安倍政権の政治的統制は非常に弱く、平和安全法制を中心とする一連の安全保障関連法も、個人の自由をほとんど制限しないものでした。また、コロナ対策の【厳格度インデックス Stringency Index】も世界最低レベル、つまり日本は個人の自由権が最も守られた国のひとつであったと言えます。
立憲民主党や共産党・メディア・活動家によって、自民党は戦前回帰した保守主義を突き進む右翼のように政治宣伝されていますが、世界的に見れば極めてリベラルな政党であると言えます。ここに、日本国民の大きな勘違いがあるのです。
大阪府の地域政党である大阪維新の会を母体として結党された国政政党の日本維新の会は、大阪維新の会の大阪における財政構造改革をモデルとした小さな政府と地方分権を主張しているリバタリアン政党です。
コロナ対応においては、吉村洋文府知事がメリハリの効いた機動性に富んだ対策を論理的に実行したことが評価されたことなどもあり、2021年衆院選では議席を四倍近くまで増やす大躍進を遂げました。
論理に基づく政策を立案すると同時に、是々非々で国会対応する日本維新の会の政治スタンスは、これまでの日本の政党にはなかったものであり、自民党よりもやや右に位置する世界標準のリバタリアン政党として、政権交代が可能な政党に成長する可能性を十分に持っていると考えます。