異論を完全否定する日本共産党
「資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革」を綱領で謳う日本共産党は、国民の自由権を制限して社会権を保障する政治的・経済的統制をイデオロギーとするポピュリズム政党です。
「生産手段の社会化を国民同意の下に行う」とするスタンスは民主主義と矛盾しませんが、明らかに不信任が困難な信任投票をもって、志位和夫委員長が21年もの長期間にわたって党の支配を続ける独裁体制は、ソ連・中国・北朝鮮等の専制主義体制と類似しています。
留意する必要がある点として、専制主義体制を持つ閉じた全体主義社会では、治者が被治者の代表であると宣言し、それを言論の自由がない被治者に立証させれば、外部からは検証不可能な民主主義社会が形式上成立することです。多くの権威主義国家は、このカラクリを使って国民を不当に統治しています。
さらには、議長を15年歴任した宮本顕治氏、委員長・議長を20年以上歴任した不破哲三氏など、特定の人物が長期にわたって共産党のトップとして君臨し続けるのは、共産主義の指導者は絶対に間違えることがないという【無謬性 infallibility】を前提としているためであり、一度トップに君臨するとその存在を否定することができなくなり、権威主義のトップと同様、終身支配者として君臨し続けることになります。
そして、共産党はこの無謬性ゆえに政策の多様性を認めることなく、異論を完全否定するのです。
自衛隊に対しては、「アメリカ帝国主義」の「世界戦略の一翼を担わされている」という認識であり、「解消(憲法第9条の完全実施)」を目標にしています。その一方、共産党は平和主義を訴えるだけで、暴力装置についてはけっして言及することはありません。一般に、ポピュリズム政党は不都合なことを語りません。
また、天皇については「民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべき」として、廃止を目標にしています。
共産党の見解とは異なり、天皇は太古の昔より治者ではなく象徴であるため、民主主義との両立には矛盾しないばかりか、むしろ日本における専制主義や絶対主義を排除してきた存在と言えます。しかしながら、「帝国主義打倒」というスローガンでその存在意義をプロパガンダしてきた共産党にとって、天皇はあってはならない存在なのです。
世紀の失政を繰り広げた民主党政権
次に、立憲民主党のイデオロギーについて詳しく分析してみたいと思います。立憲民主党のイデオロギーを理解するには、1990年以降の「政界再編」という名の離合集散の経緯を辿るのが肝要です。
天安門事件、ソ連崩壊、バブル崩壊といったイベントを経て新時代に入った日本の政治は、親中で公共事業推進の「大きな政府」を志向する自民党田中派の後継である竹下派の全盛時代でしたが、選挙制度改革を求める小沢一郎氏を中心とする竹下派の一部議員は自民党を離党し、親北朝鮮の日本社会党の一部と合流することで、非自民・非共産の細川・羽田政権を樹立するに至りました。
すると今度は、自民党、社会党、そして新党さきがけが自社さ政権を樹立して、これに対抗しました。この新党さきがけも、竹下派の鳩山由紀夫氏などの自民党議員と菅直人氏などの社会党系議員が合流したものです(日本新党系の枝野幸男氏も参加)。
このように、この時代の主流は、自民党竹下派議員と社会党系議員が中心となって手を組んだ社会自由主義のイデオロギーを持つ親中・親北朝鮮の「大きな政府」であったと言えます。この間、中国は日本のODAを利用してすくすくと成長していきます。
自社さ政権のあと、再び竹下派が支配する自民党単独政権(橋本政権)が成立すると、少なからず政権を経験した野党勢力は結集し、政権交代可能な「民主中道」を基本理念とすると謳った民主党を結党しました。
やがて2000年代に入ると、自民党竹下派の支配は終わり、「自民党をぶっ壊す」というスローガンを掲げた小泉純一郎氏が新自由主義の「小さな政府」を運営します。「私の内閣の方針に反対する勢力、これは全て抵抗勢力だ」と宣言して、敵を造った劇場型政治は国民を熱狂させました。
小沢氏・鳩山氏・菅氏をリーダーとする民主党は、この衆愚政治の手法をまね、「コンクリートから人へ」というスローガンを理念とする実現可能性のないマニフェストを国民に大宣伝して、政権交代を実現しました。
民主党政権は、経済面では生産者を冷遇して消費者を優遇する成長なき分配政策で経済的社会権を約束する大きな政府でしたが、無駄の排除で捻出できると宣言していた財源が実際には確保できず、次々と公約を断念、強力なデフレと水膨れ予算により急激に財政は悪化し、最後には約束してもいない増税を決定するに至りました。
また、政治面では東日本大震災に際して、福島第一原発の周辺住民を不必要に強制退避させて大量の震災関連死を発生させるという大失敗を犯し、日本中の原発を半強制的に停止させ、しかも無計画な再生エネルギーへの補助金投入で、国富の流出と電気料金の大幅値上げを招きました。
民主党政権は、政治的統制を強めたにもかかわらず、精神的・身体的社会権に加えて、経済的社会権まで国民から奪ってしまったのです。