「われわれは、日本における革命においても、民主連合政府が政権をとった場合に、これを不法な暴力で転覆しようとするものにたいする政府としての反撃の権利を、敵の出方論の典型的なものとして説明しています。一部の人びとは、これを絶対平和主義ではないからといって非難しようとしていますが、しかし絶対的な平和主義こそ、主観的には善意であっても、典型的な観念論、事実上の夢想主義とならざるをえません。それは、国民がえらんだ合法的な政府が、一部の無法な暴力に無抵抗で降伏することを要求する非現実的主張にもなります」
これは、1970年7月の日本共産党第11回大会で採択された中央委員会報告の一節である。この立場に立てば「どんな場合でも、平和的…」という志位委員長は夢想主義に陥っていることになる。
志位委員長がいう「合法的に社会変革の事業を進める」も鵜呑みにはできない。
第11回党大会での中央委員会報告でも「合法的な政府」が強調され「政府としての反撃の権利」が正当化されている。
革命の政府ができれば、革命に反対する勢力への反撃は「合法的」になるというが、その根拠となる法令は共産党に都合のいい、革命政府がつくった法令である。先に指摘したように、革命とは司法権も含めた「国家機構の全体」(国家権力)を掌握することであることを想起してほしい。
革命に反対する行動を「犯罪」として取り締まると宣言
不破氏は「政権についたときにその共産党の入った政権なるがゆえに従わないという勢力が出た場合、そういう勢力がさまざまな暴挙に出た場合、それに対して黙っているわけにはいかない、そういうのは力をもってでも取り締まるのが当たり前だ、これは憲法に基づく政府の当然の権利でしょう」(1989年2月18日の衆議院予算委員会)と述べている。
宮本顕治氏もこう語っている。
「議会制民主主義にもとづいて、人民の総意で日本共産党とその連合勢力が選挙で勝つと当然、政府につきます。そのとき、これを暴力によって襲撃する策動がおこれば合法政府の権力によって鎮圧する、取り締まるということは、当然主権在民の政府の適法的行為であります。これが『敵の出方論』の中心点です」(1989年2月1日、党中央委員会総会での冒頭発言)。
最近でも、共産党の宮本徹衆院議員がツイッター(2021年9月14日)でこう発言している。
「選挙をへてうまれた政権に対して、権力を失った勢力が反乱をおこすことは、世界史では山のように繰り返されてきました。そうした場合、選挙で多数をえた政権が合法的に取り締まるのは当然です。これは選挙で政権をえた勢力による暴力革命でしょうか?それとも、権力を失ったものによる犯罪でしょうか?」
いずれも革命に反対する行動を「反乱」「犯罪」として共産党が「合法的」な強制力(暴力)によって鎮圧、取り締まるという宣言である。それは立場を逆転させれば武力弾圧であり、自由を奪う圧政にほかならない。
現在の世界を見渡してみればいい。香港の民主化運動への弾圧は中国共産党からすれば法にもとづく取り締まりだ。軍事クーデターに反対するミャンマーの民衆運動も同じように軍によって適法的に鎮圧されている。アフガニスタンで再び政権についたタリバンも「イスラム法」にもとづいて女性たちから自由をうばっている。「合法的」は反対勢力への暴力を合理化する口実にすぎない。