志位委員長も党創立99周年記念講演(8月4日)で「敵の出方」論について「(1)選挙で多数の支持を得て誕生した民主的政権に対して、反動勢力があれこれの不法な暴挙に出たさいには、国民とともに秩序維持のために必要な合法的措置をとる。(2)民主的政権ができる以前に反動勢力が民主主義を暴力的に破壊しようとした場合には、広範な国民世論を結集してこれを許さないというものです」と説明している。
この説明で注目すべき点は(1)が革命勃発またはその後の時点についてであり、(2)が革命以前の平時についての対応だということだ。「敵の出方」論は革命時だけが問題になるのではなく、日常的な党活動で必要とされる警戒心なのである。
そのため共産党は革命をめざす党の活動の障害となりうる団体や組織を「反動勢力」と決めつけ、常にその動向に注目している。具体的には警察、自衛隊、在日米軍などである。
共産党がこれらの組織を絶えず非難し、国民がそれらを信用しないようにしているのは「敵の出方」論に由来する警戒心からである。
私が1992年に共産党本部勤務員に採用された際に最初にうけた教育では「現在の警察は政治警察であり、26万の警察が常時、日本共産党を監視下におき、攻撃の機会をねらっている」、「そもそも国家権力の支配の根幹に、権力としての強制力(警察、軍隊、裁判所・監獄、徴税機構)があることを常に念頭におく。『和解』できない階級対立がある」(党内教育用テキスト『選挙・政治活動と党防衛のたたかい』)と教えられたものだ。
志位委員長は「敵の出方」という表現は綱領には使っていないというが、現行綱領には「対日支配の存続に固執するアメリカの支配勢力の妨害の動きも、もちろん、軽視することはできない」という表現がある。今でも「敵の出方」にたいする警戒は共産党の日常活動の基本なのである。
山添拓参院議員が書類送検、共産党の順法感覚
山添拓、村井あけみ両議員のツイッターより
こうした異常な警戒心がどんなことを引き起こしているか。その実態はいたるところで散見される。
今年2021年9月16日に、共産党の山添拓参院議員が埼玉県警に書類送検された。前年の11月3日に趣味の鉄道写真でいわゆる「撮り鉄」である山添議員が撮影のために秩父鉄道の線路内に立ち入っていた件での送検である。本人は「軽率な行為だった」と反省しているのだが、共産党員や共産党支持者からは公安調査庁や警察が尾行、監視していたという謀略説が流された。
共産党衆議院広島7区予定候補の村井あけみ氏は「お気を付けください。それこそ、監視されていますよ。金看板をかけているのですから」と、あたかも共産党議員だったゆえに当局が監視されていたかのような“忠告”を山添議員に送っている(9月18日のツイッター)。
実際は、鉄道イベントの日に集まる撮り鉄たちのルール無視の行為を警戒していた警察が発見、摘発した複数人のなかのひとりはたまたま共産党議員だったというだけである。
さすがに共産党中央の指導部はこの件で警察を非難する声明は発表していないが、末端の党活動家には、これが公安による共産党弾圧だと見えるのである。「敵の出方論」による警戒心が共産党に染みついている一例だといえる。