岸田文雄氏の総裁選出が“理にかなっている”ワケ|八幡和郎

岸田文雄氏の総裁選出が“理にかなっている”ワケ|八幡和郎

注目を集めた自民党総裁選は、岸田文雄氏の勝利で決着がついた。 八幡和郎氏は以前から、岸田氏の外交力を高く評価。また、過去の寄稿で、河野太郎氏や高市早苗氏、野田聖子氏らを的確に分析している。改めて、2020年9月号の記事を掲載!


稲田氏の前向きな変身

さらに、もうひとつの可能性は女性首相である。日本社会で女性の進出が遅れていることは、対外的なイメージにもよくないし、日本の社会経済改革の妨げにもなっている。女性国会議員比率が世界最低クラスなど、象徴的だから解消したい。
 
アメリカでは、民主党の大統領選候補者として確定的なジョー・バイデン前副大統領は、副大統領候補に女性を指名することを明言している。バイデン氏が大統領に就任するとしたらその時点で78歳、任期を全うできるかもわからないし、当選しても四年後の立候補はない可能性が高い。となると、女性副大統領がそのまま後継候補の最有力となる。
 
具体的な名前としては、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員が最有力だ。ジャマイカ出身の経済学者(白人と黒人の混血)とインド出身の医学者の子で、弁護士・検事から政界入りした。予備選挙でバイデン氏を攻撃していたのが難点と言われるが、支持率は一番高い。
 
このほかにも何人か候補がいるが、アメリカでも女性大統領が現実化しそうななかで、日本からも女性政治家が宰相候補として名乗りを上げることは、それ自体望ましいことだ。
 
稲田朋美氏は、カマラ・ハリス氏と同じ弁護士なのも、好都合になるかもしれない。保守のチャンピオンとして安倍首相のあとを継ぐホープとみられたが、防衛相としてややもたついた。
 
その後、LGBT問題などでリベラル旋回をしているとして歓迎する人もいれば、戸惑う人もいる。

ただ、稲田氏が政権を狙うなら、狭い意味での保守派以外にも支持を拡げる必要があることは明らかなのだから、保守派としての基本路線を守りつつ、女性や子供の問題などで男社会のしがらみにとらわれない大胆な政策を打ち出していくことは、路線として正しい選択だと思う。
 
アメリカで言えば、セオドア・ルーズベルトなどがそうだったように、「保守改革派」という新しい道を成功させることができれば期待したい。
 
野田聖子氏が実績においてもっとも分厚いものを持っているが、本当に政権を狙うつもりがあるのなら、安倍首相との関係をもう少し大事にすべきだったようにも思えるし、配偶者の国籍だとか前歴についてきちんとした説明もするべきだと思う。
 
ただし、配偶者の問題については、上記の男性の候補者たちにもこれまでの首相ほどきちんと情報公開していない人がいる。安倍昭恵夫人を引き合いに出さなくとも、総理夫人は実質的に政治に大きな影響を及ぼすし、外交上の役割も大きいから不適切だ。

安定感抜群の高市早苗氏

小渕優子氏については、長老政治家たちに支持され優遇されてきたが、自立した政治家としての見識なり能力を発揮してきたわけではないし、後援会をめぐるスキャンダルでは甘さを露呈もした。

また、中国と首相の関係が良くないと言われた時期には、親中派としての期待もあったが、いまや安倍首相より親中派であることは有利に働かない。好感度は高いから、改めて独り立ちした政治家としての成長を期待される。
 
また、総理候補としてはあまり名は出てこないが、現在の女性政治家でどんな閣僚をやらせても危なげがなく、いちばん安定しているのが、高市早苗総務相であることはいうまでもない。とくにワシントンでの在駐もあり、外交を任せられる存在であることが貴重だと考える。
 
いずれにせよ、都知事選での小池百合子氏の圧倒的な強さを見ても、女性宰相候補への期待は大きいのだが、首相は知事と違ってパフォーマンスだけでは務まらない。やはり、永田町で実績を積んだ女性議員から宰相候補が現れるのを期待したい。
 
もちろん、ここに挙げた人たちがすべての首相候補ではない。もし、いま安倍首相が倒れたらと仮定すれば、麻生副総理が昇格するだろうし、甘利明氏も超実力派だし、西村康稔、小野寺五典両氏も対外交渉において高度な能力を発揮できることを示してきた。林芳正氏も将来のホープと言われて久しい。
 

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