【読書亡羊】元次官の「面従腹背」は続いている? 前川喜平『権力は腐敗する』

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


しかしもう一方で後者、つまり「前川氏は大嫌いな安倍・菅体制にあっても面従腹背で、本性を隠し切った」面も否定できない。そしてそれは今も続いているのではないか、という気さえするのだ。

権力は腐敗する

「やってこなかったことを、やってきたかのようには書けない」

「面従腹背」は官僚としての前川氏のモットーであったらしく、今回の『権力は腐敗する』の前作のタイトルにもなっている。『面従腹背』についても以前、取り上げたことがあるが(下記リンク参照)、この時も指摘したように、前川氏は「面従腹背して権力に従った、リベラルからどつかれそうな案件」については無視を決め込んでいる。

今回の『権力は腐敗する』でも、さすが文科官僚だけあって、安倍政権下でのコロナ「全国一斉休校」などには詳細に検証し、苦言を呈しているが、食い足りないのはまさにそこで、「内部の手続き論などを詳しく書いてはいるけれど、自分がその場にいたらどういう手法や論理でそれを覆したのか」についての言及はない。

「あったことをなかったことにはできない」も前川氏の名言であるように、「やってこなかったことを、やってきたかのようには書けない」のかもしれない。

つまり面従腹背してきた前川氏は、内心では「安保法制反対デモに参加してしまうような反体制的思考」を持ってはいても、「安倍政権下での腑に落ちない文科行政に対し、実際に反対論をぶつ」ことはなかったのだろう。

本書では「ふるさと納税」に反対して飛ばされた総務官僚についての言及があり、〈菅首相は官房長官の頃から、気に入らない官僚は排除してきた〉としている。

順当に事務次官になった前川氏の「面従腹背」ぶりはさぞや見事なものだったのだろう、と思わざるを得ない。

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