【読書亡羊】元次官の「面従腹背」は続いている? 前川喜平『権力は腐敗する』

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


安倍政権最大の失政?

歴代最長内閣となった安倍政権にも、失政と言われても仕方ないものはあった。「え、月刊『Hanada』のサイトでそれを言うの」と驚かれる向きもあるかもしれない。

だが「前川喜平の文部科学次官就任」を挙げれば、安倍政権を評価する人であっても頷かざるを得ないのではないか。

前川氏が次官に就任したのは2016年6月。安倍政権真っ盛りのさなかのことである。

安倍政権に対しては菅官房長官のグリップ力と相まって、「官邸が官僚を人事でコントロールし、強権をふるって異論を排除したことで、逆らう官僚はいなくなった」といったトーンの批判も少なくない。

だが、前川氏の「面従腹背」を見破ることができなかったのも事実。官邸がそこまで個別の官僚の人となりを網羅できなかったのか、前川氏の演技がそれほどまでに高度なものだったのか。

「私の『本性』を知っていたら…」と前川氏

おそらく両方なのだろう。前者については、ほかでもない前川氏が今回取り上げる新著『権力は腐敗する』(毎日新聞出版)に次のように書いている。

 かく言う私自身も、2016年6月第二次安倍政権の下で文部科学省の事務次官に任命されたわけだが、この人事は菅氏に取り立ててもらったというものではない。私はすでに事務次官昇任への待機ポストである文部科学審議官になっていたので、特に不自然な人事ではなかった。

 しかし、私の事務次官就任人事は官邸から見れば明らかな失敗だった。私の「本性」を知っていたら、安倍氏も菅氏も決して私を事務次官にしようとは思わなかっただろう。人物のチェックが不十分だったわけだ。

 なぜなら、私は安保法制反対のデモに参加していたからだ。

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