前川さんは「君が代」がお嫌い?――前川喜平『面従腹背』|編集部

前川さんは「君が代」がお嫌い?――前川喜平『面従腹背』|編集部

編集部・梶原の「リベラル本 ずぼら書評」


編集部・梶原の「リベラル本 ずぼら書評」 『面従腹背』

編集部・梶原の「リベラル本 ずぼら書評」

旬の「リベラル本」、どんなことが書いてあるのか確認したいけれど……。そんな本をご紹介するこのシリーズ。3冊目は前川喜平『面従腹背』(毎日新聞出版)。

引っ張りだこの前川さん

いわゆる護憲派・リベラル業界では講演ひっぱりだこ状態の前川さん。一度、「前川喜平×望月衣塑子×寺脇研」という夢の顔合わせの会があったのですが、なんと会場満員で入れませんでした。大人気!

その前川さんが繰り出した本書。一体どんなことが書いてあるのか!

基本的には「僕の面従腹背の仕事の記録」と言った様相。しかし社会人になれば、誰でもどんな環境でも、少なからぬ「面従腹背」の場面はあるのではないでしょうか。「俺はAがいいと思うのに、上司はBがいいって言うんだよ……分かってねぇよな」という巷によくある愚痴を、「教育」というステージに載せて語るとこうなるのかという印象。もちろん教育は大事で、勉強になった部分もあります。本書を読んでいると「……立派ね。でもできなかったんでしょ?」と言われてヤケ酒を飲む前川さんが目に浮かぶようです。

ある節などはズバリ〈やりたくなかったユネスコ憲章改正〉。ストレートすぎませんか。ちなみに、そんな前川さんが、もっともやりたくなかった仕事は、2006年の教育基本法改正だそうです。

一方で、リベラル勢からはどつかれそうな教育方針に関して、自身が「面従腹背」ながらもかかわった案件については華麗なるスルーを決めております。

日の丸・君が代に対する葛藤が

印象的なのは〈義務付けられた国旗・国家の指導〉という見出しの個所。

〈教育課程行政は、国家権力と教育とが直接交錯する分野だ。ここでは、組織の方針と私個人の思想・良心との乖離が最も大きくなり、面従腹背の緊張関係が最も強くなる。なかでも、日の丸・君が代の取り扱いについては、折り合いの付けようがない〉

続けて、「自分は国旗国歌を日本のシンボルとして尊重することに特段の抵抗感はない。が、かつて軍国主義・全体主義の日本、侵略戦争をする日本のシンボルであったことは事実で、君が代も天皇制という特異な制度と結びついた歌であることも事実。抵抗感を持つ人たちの心情は理解できる」(要約)とも仰っています。

「自分は違うけど、そういう人たちの心情は理解できます」というトーンですが、実際には前川さん自身が「日の丸・君が代にかなりの抵抗感を持つ人」なのでは? 現に、下記の「気になるポイント」でも紹介している前川さんのツイッターアカウントには、こんな書き込みがあります。

〈安倍自民党総裁は君が代斉唱で仕事始めだと。なんとグロテスクなんだ〉(2013年1月9日)

やはりご自身も君が代が嫌いなのでは……。前川さん、ここはもう「面従腹背」せず、本音をぶちまけていい場面でしたよ! まだ精神的に自由になり切れていないのかもしれません。

友達が少ないからダメ?

本書には「加計学園問題の全貌を激白」と題する前川喜平×寺脇研×倉重篤郎(毎日新聞専門編集委員)の座談会も掲載。ここにきてようやく、前川さんは自身の辞任の理由となった「就職斡旋(天下り)」問題に触れていますが、よく読んでいくと「でも加計学園問題よりはマシ」という展開に。

また、公募開始から2年で国家戦略特区による開校が許された国際福祉大学医学部についても触れています。この学校は「メディアや文科省OBの天下りがあるから、批判されないのでは」という噂がありました。これについての前川さんの弁がふるっています。

〈(国際医療福祉大学の医学部には加計学園との明確な違いがある、と前置きし)国際医療福祉大学の高木邦格理事長は政界に幅広い交友、人脈を持っている方だということ。安倍総理のお友達だから、という加計学園のようなあからさまな行政の私物化には見えなかった。一方で加計さん(孝太郎理事長)が頼りにするのは安倍総理しかいなかったため、その関係がよりクローズアップされることになってしまったのです〉

エエーッ。まさか加計理事長も「安倍さんしか友達がいないから怪しく見えたんですよ」と言われるとは思わなかったでしょう。最後の最後で、驚かされました。

【本書の「気になるポイント」】

「もしかして前川のアカウントでは?」と話題になり、実際そうだった前川さんのTwitterアカウント「右傾化を深く憂慮する一市民」。

このアカウント名に、「でも本当は『一市民』じゃないもんね」的なものを感じるのは私だけでしょうか。

2012年12月開設のこのアカウントは、官房長から次官までの出世コース驀進中の間はもちろん、次官時代にも書き込んでいたというまさしく「裏アカ」ですが、そのなかから厳選した(?)つぶやきと、セルフ解説が本書巻末に収録されています。一例がこちら。

〈安倍右翼政権を脱出し、僕は本当に一市民になった。空を飛ぶ鳥のように、自由に生きる〉(2017年3月25日)

……日の丸・君が代ではなくて、安倍総理が嫌いなだけかも。

前川さんにも読んでほしい! 飛鳥新社の名著シリーズ。

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