筆者は、高市氏の志を了とし、できれば首尾よく推薦人20人を集めて立候補を実現し、勝利することを願う。高市氏の国家観、歴史観を頼もしく思い、こうと決めたらテコでも動かぬ信念の強さに以前から感心させられているからだ。
高市氏に強烈な印象を抱いたのは、いまから20年ほども前になろうか、テレビ番組であの戦争について「侵略戦争ではない。自存自衛の戦争だった」と語ったことを直接観たか、あとで話を聞いたかしたのが最初だ。
これに対して、キャスターの田原総一朗氏が「あなたのような幼稚な政治家がいるからだめなんだ」などと罵倒したように思うが、一歩も退くことがなかった。
本当は「セキュリティのための戦争だった」と言ったそうだが、同じことだ。
この日本は侵略国ではないという姿勢はその後も一貫していて、安倍政権が長期政権になって閣僚の靖國参拝がほとんど行われなくなっても、終戦の日や春秋の例大祭などには必ずといっていいほど高市氏の姿があった。
文春の論文では、〈私は、国の究極の使命は「国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと」「領土・領海・領空・資源を守り抜くこと」「国家の主権と名誉を守り抜くこと」だと考えている〉としている。
高市氏なら中国、韓国に引け目を感じて靖國参拝をしないとか、村山談話、河野談話にとらわれて自虐的になることはないのではないかと思うのである。また、憲法改正についても、「戦力不保持」「交戦権の否定」をそのまま残すなどという妥協をすることもないのではないか、と期待が持てる。
『文藝春秋』の論文では、「中国」問題への取り組みも強調している。〈今後、中国共産党が日本社会への浸透と工作を仕掛けてくる可能性もある〉として、「経済安全保障」の立場からも法整備を急ぐというのである。
高市氏こそ保守正流で、日本のサッチャーになれる存在だと信じるが、筆者がいくら待望しても、総選挙で自民党が国民の信任を得られるとは限らない。それほどコロナの爆発的な感染拡大をめぐる世間の政治不信は根強いと思っている。
(初出:月刊『Hanada』2021年10月号)
著者略歴
ジャーナリスト 1950年、山口県下関市生まれ。産経新聞政治部で首相官邸キャップ、外務省キャップなど歴任。その後、ニューヨーク支局長、外信部次長などを経て退社。著書に『これでも朝日新聞を読みますか?』『すべては朝日新聞から始まった「慰安婦問題」』など多数。月刊『Hanada』で「左折禁止!」連載中。