自民党総裁選をめぐる駆け引き
(撮影/今井一詞)
東京五輪が終わり、政局の焦点は9月に任期満了を迎える自民党総裁選、10月に任期満了となる衆院選挙に移った。それをどうやり遂げるかが、自公政権の消長をも左右する。
8月11日、党新潟県連の高鳥修一会長が二階俊博幹事長に、自民党総裁選を予定どおり、党員投票を伴う形で総選挙前に行うよう申し入れを行った。
これが「いますぐ菅首相を代える意義は、私はみつからない。むしろ、『続投をしてほしい』という声のほうが国民の間にも党内にも強いのではないか」などと再三繰り返し、無投票再選まで示唆する二階氏らを牽制したものであることは言うまでもない。
高鳥氏は、自民党総裁選をフルスペックで行うことの大義をこう語っている。
「自民党は国民から大変厳しい目で見られている。党員一人ひとりが総裁を選ぶというプロセスを解散総選挙前に踏むことが、党内の結束を固めるためにどうしても必要だ」
さらに無投票再選の動きについて、「長老、派閥の領袖が流れを決めるのは、わが党のあり方として大変マイナスだ」と言い切った。
高鳥氏は、自民党総裁特別補佐、党筆頭副幹事長などを歴任した党内中堅で、保守系議員の集まりである「保守団結の会」の代表世話人でもある。鳥氏らは、内閣支持率が民主党からの政権奪還以来初めてと言われるほど低い水準に至っているのに、予定調和的に事を運ぼうとする党執行部や派閥の領袖らの動きに強い危機感を感じているのである。
そしてこうした危機感に呼応するかのように、8月10日発売の『文藝春秋』で「総裁選に出馬します!」と手を挙げたのが、安倍政権で総務相や沖縄・北方担当相、また党三役の政調会長も務めた高市早苗氏である。
高市氏は、首相の発信力の無さを問題にしている。
〈各種世論調査で、菅内閣の支持率が下落し続けている。テレビで拝見する菅義偉総理の顔からは、「叩き上げの庶民派総理」として人気を集めた就任当初の潑溂とした表情が消え、発する言葉からは自信も力強さも伝わらなくなってしまっており、残念でたまらない〉
また、首相が強い発信をできなくなっているのは、
〈自民党員や国民の皆様の十分な信任を受ける機会がなかったからだ〉として、やはり選挙前にすべての党員が参加する総裁選を行うべきだと主張。そのうえで、〈社会不安が大きく課題が多い今だからこそ、今回、私自身も総裁選に出馬することを決断した〉と言う。