我が「NHK改革」具体案|高市早苗

我が「NHK改革」具体案|高市早苗

高止まりする受信料や営業経費、肥大化する放送波、子会社等との「随意契約率」93・5%という驚くべき実態、国民に還元されない多額の繰越剰余金――「伏魔殿」と称されるNHKを国民の手に取り戻すために、高市早苗前総務大臣が掲げたNHK改革の具体案!


「三位一体改革」に着手

総務大臣在任中に私が提唱し、長い時間を費やして懸命に取り組んできたことは、ひと言で表現すると「業務」「受信料 「ガバナンス」の「三位一体改革」だった。  

最初の大臣就任直後から様々な問題が続けて発生したことから、平成27年10月に、総務省に「放送を巡る諸課題に関する検討会」を設置し、翌月からNHK改革を含む本格的な議論を開始した。

この検討会は現在も続いているが、有識者など構成員に加えて、民間放送事業者やNHKなど関係者にも出席していただいてオープンに議論を進めている。検討会の結論を受けて、総務省が『放送法』の改正案を作成したり、NHKが改革案を検討したりと、影響力のある検討会だ。  

大臣再任後に、この検討会の下に「公共放送の在り方に関する検討分科会」を設置して、NHKの課題に特化した議論を進めていただき、2020年6月には、『三位一体改革推進のためNHKにおいて取組が期待される事項』を取りまとめていただいた。  

2020年1月に就任された前田晃伸NHK会長は、就任後初となる『中期経営計画(案)』(令和3年度から3年間の計画)を取りまとめるにあたり、前記分科会の意見も参考にして下さり、「スリムで強靱なNHK」を掲げ、番組編成や放送波の削減などを通じて支出規模の圧縮に取り組むことなど、構造改革への決意を示された。  

特に衛星やラジオの「放送波の削減」については私の持論でもあったので、前田会長が過去のNHKではあり得なかった強い改革姿勢を示されたことについて、大いに敬意を表し、その実現を期待している。  

NHK内部には、会長の改革案に対する反発が強く、相当な苦労をしながら奮闘しておられると仄聞している。

「NHK改革に係る私の問題意識」について、以下、整理して書かせていただく。

NHK受信料を引下げるために

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第一に、「受信料の高止まり」だ。  

籾井会長の後任として平成29年1月に就任された上田良一会長は、2019年10月の消費税率引上げ(8%から10%)に際して受信料額を据置き、実質引下げを実現して下さった。  

上田会長の後任として2020年1月に就任された前田会長には、2020年春、新型コロナウイルス感染症の拡大により、とりわけ旅館やホテルをはじめとする中小企業の経営が悪化していたことから、受信料の負担軽減策の検討をお願いしたところ、早々に実現していただき、感謝している。加えて、2020年10月には、地上契約で月額35円、衛星契約で月額60円の受信料引下げをしていただいた。  

それでも、「NHK受信料が高い」というお声は、依然、多数の方々から寄せられている。  

現在のNHK受信料は、地上契約で月額1225円(年額1万4700円)、衛星契約で月額2170円(年額2万6040円)となっており、多くの方は、地上と衛星の両方の受信料を含む「衛星契約」をしておられると思う。  

特に、衛星放送を全く観ないのに、予め衛星アンテナが設置された集合住宅に入居された方は、年額2万6040円ものNHK受信料負担に納得しておられないだろう。この「衛星付加受信料」は、「受動受信問題」と呼ばれている。その負担額の一部が8K放送への投資によって「付加」されていると聞いても、納得できる方は多くはないはずだ。  

諸外国の公共放送受信料と比較することは、為替変動による誤差が生じるので困難だが、概ね、フランスは約1万8000円、イギリスは約2万2000円、韓国は約3000円でカーナビは受信料徴収対象外だ。  

NHK受信料を引下げるためには、後記する様々な改革により、NHKのスリム化と効率化を行っていただくことが必須である。  

衛星波については、「番組編成の重複」を排除して波数を減らし、それに応じて、「衛星付加受信料」については撤廃が必要だと考える。  

2020年9月、自民党総裁選挙が始まってすぐに、菅義偉候補(当時は官房長官)に対して、「NHK受信料の引下げも、総裁選挙の公約として発言していただきたい」旨をお伝えし、NHKの諸課題と解決策案を簡潔に一覧表にした資料もお渡ししたのだが、総裁選挙では私の希望は叶わなかった。  

菅内閣の最優先課題は「携帯電話料金の引下げ」だが、携帯電話料金ならば、ユーザーがMNO(移動通信サービスに係る無線局を自ら開設・運用して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者)のサブブランドの安価なサービスを選択することもできるし、MVNO(移動通信サービスに係るインフラを他社から借り受けて、移動通信サービスを提供する電気通信事業者)の格安スマホに乗り換えることもできる。データ使用量を自らセーブして節約することもできる。  

しかし、NHK受信料は定額であり、NHK視聴の有無に関係なくテレビ受信機を設置したら支払わなければならない。民放各社は、「NHK受信料が高額だから、余計にテレビ離れが進んでいる。民放も被害者だ」と憤っている。  

菅内閣には、受信料の引下げに繋がる「NHK改革」にも、優先課題として取り組んでいただきたい。

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