我が「NHK改革」具体案|高市早苗(前総務大臣)

我が「NHK改革」具体案|高市早苗(前総務大臣)

高止まりする受信料や営業経費、肥大化する放送波、子会社等との「随意契約率」93・5%という驚くべき実態、国民に還元されない多額の繰越剰余金――「伏魔殿」と称されるNHKを国民の手に取り戻すために、高市早苗前総務大臣が掲げたNHK改革の具体案!


最後に、とても困難だが、逃げてはならない課題を記す。「受信料制度の抜本的改革」だ。

「通信・放送融合時代」を迎え、若年層を中心にテレビ受信機を設置しない世帯が増加し、インターネット上の動画配信サービスの視聴が拡大するなど、テレビ視聴を巡る環境は大きく変化している。  前記したとおり、現行の『放送法』に基づく受信料制度は、あくまで「テレビ受信機の設置」が基準となっている。  

ほぼ全ての世帯がテレビ受信機のみを通じて放送番組を視聴していた時代には、NHK受信料は「負担金」として一定の合理性があったと思う。  

しかし、いまやテレビ放送用チューナーを搭載していない大型ディスプレイパネルが販売されており、インターネットによる多様なニュース番組や討論番組はもちろん、デバイスを挿して映画やドラマなど無料や有料の様々なサービスを楽しむことができる。  

すでにNHKでは、「テレビ受信機は持っていないけれども、インターネット常時同時配信サービスでNHKの番組は視聴したい」と希望される方に対して、適切にサービスを提供することができないという課題が顕在化しており、『放送法』に規定する受信料制度の抜本的見直しは不可避になってきている。  

具体的には、二種類の方法が考えられる。  

第一は、イギリス方式で、「地上」と「衛星」と「ネット」の料金を一元化したうえで、全体的な料金水準を引き下げる「総合受信料」への変更だ。前田会長は、「衛星付加受信料」に係る不公平感解消の手段として、この方法を希望しておられると承知している。  

第二は、ドイツ方式で、テレビ受信機の保有に関係なく、全ての住居占有者および事業主に対して「公共放送維持負担金」(仮称)を義務付ける方法だ。この場合は、公共料金や税金との一括徴収が可能となり、前記した「営業経費の高止まり」や「不公平感」の課題は解決する。  

いずれの方法を選択するにしても、「低所得世帯については支払を免除すること」や「現状の受信料よりも格段に安い水準にすること」が求められると思うが、現在は支払っていない方々にも負担を求めることとなるため、政治的には相当な困難を覚悟する必要がある。  

しかし、技術革新や生活スタイルの変化に法律が追い付いていないことはたしかで、「受信料制度の抜本的見直し」は避けてはならない課題である。  

実は過去にも、「受信料の支払義務化」に向けた『放送法』改正案が、数回にわたって議論されている。  

昭和48年には、「契約義務を支払義務に改正」 「罰則規定なし」という内容の法案が国会に提出された。衆議院逓信委員会で審議されたが、国会閉会時に審議未了で廃案になった。  

昭和55年には、「契約義務を支払義務に改正」「受信設備設置の通知義務」「延滞金の規定を追加」という内容の法案が国会に提出された。審議は行われないまま、衆議院解散による審議未了で廃案になった。  

平成18年には、『通信・放送の在り方に関する政府与党合意』において「支払義務の導入」が提示され、平成19年には、総務省が、受信料を2割程度引下げることを前提に「契約義務を支払義務に改正」「受信設備設置の通知義務」「延滞金の規定を追加」「罰則規定なし」という内容の法案を準備した。  

ところが、NHKが受信料引下げに難色を示したため、「支払義務化」の条項を法案から取り下げ、結局、『放送法』の改正は実現しなかった。  

大臣再任後、総務省の「放送を巡る諸課題検討会」で、諸外国の公共放送制度も参考にしながら、有識者や放送関係者の皆様に「受信料制度の抜本的改革」について議論をしていただいてきた。大臣を退任したいまでも、検討会の結論が政府による法改正への再トライを認めるものになることを期待している。

視聴率狙いの番組制作をする必要はない

ただし、「公共放送維持負担金(仮称)の支払義務」を明記するような『放送法』改正を実現するためには、「NHKは日本にとって大切な公共放送の担い手という存在なのだから、必ず維持しなければならない」という声が国民の皆様から湧き上がるような、NHKに対する揺るぎない信頼感が醸成されることが必須だ。  

いまさらだが、NHKは『放送法』第15条に基づいて、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(略)を行う」ことなどを目的として設置されている特殊法人だ。  

多くの方々が負担して下さる貴重な受信料によって運営されている法人だからこそ、前田会長がおっしゃるように「質の高いNHKらしい充実したコンテンツを、合理的なコストで提供していくことが重要」なのだ。  

そもそも企業スポンサーが不要なのだから、民放と競って視聴率狙いの番組制作をする必要はないし、民放や新聞社の業務を圧迫するような事業を行う必要もない。

(初出:月刊『Hanada』2021年1月号)

高市早苗

https://hanada-plus.jp/articles/778

1961年生まれ、神戸大学経営学部卒業、㈶松下政経塾卒塾、米国連邦議会Congressional Fellow、近畿大学経済学部教授(産業政策論・中小企業論)。衆議院では、文部科学委員長、議院運営委員長等を歴任。自由民主党では、政務調査会長(2任期)、日本経済再生本部長、サイバーセキュリティ対策本部長(2任期)等を歴任。内閣では、通商産業政務次官、経済産業副大臣(3回任命)、内閣府特命担当大臣(3回任命)、総務大臣(5回任命で史上最長在職期間を記録)を歴任。現在は、衆議院議員(8期)、自由民主党奈良県第二選挙区支部長。

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