コロナ対応を狂わせる「医系技官」のひどすぎる実態|八幡和郎(評論家)

コロナ対応を狂わせる「医系技官」のひどすぎる実態|八幡和郎(評論家)

コロナ対策でにわかに注目されている厚労省の「医系技官」。 しかし、彼らは霞が関の「獅子身中の虫」だった! 医療界の内情に詳しい筆者が、その知られざる実態を暴く!


しかし、医系技官は、公務員試験を受けていない。医師資格をもっていたら、あとは面接などを経て希望者はだいたい採用されるのだ。
 
一般に、医学部では入学早々から職業教育の準備が始まり、他学部の学生ほどには一般教養を熱心に勉強しないから、その彼らに一般教養試験免除というのは、本当によくない。
 
必ずしも新卒とは限らず、長い期間、医師として働いた人も多い。尾身茂新型コロナウイルス感染症対策分科会長(コロナ分科会長)も十年間ほど現場で働き、自治医大の助手を経て厚労省の医系技官となり、さらにWHOで働いた。
 
何かと話題になることが多い、大坪寛子厚労省審議官も慈恵医大を卒業して十五年後に厚労省入りしている。

医系技官のトップは、事務次官クラスの医務技監で、現在は、熊本大学出身の福島靖正氏だ。週刊誌で、学生時代にガールフレンドだった宮崎美子の写真を『週刊朝日』に送ってデビューのきっかけをつくった人と話題になったことがある。
 
課内歓送会で二十三人の大宴会をやった眞鍋馨老人保健課長も東北大学医系技官だ。

あのニュースを聞いたとき、出世の道を諦めざるを得なくなるような軽率な行為をするとは、ずいぶん、度胸のある官僚だと思ったが、いつでもやめて医者になればいい医系技官と聞いて納得がいった。
 
彼らは、事務系の厚労省の事務次官や総理官邸から睨まれるより、医者仲間の評判の方が気になるのである。厚労省の天下り先にしても、役所の関係者はわずかだから、医者仲間から評価されないと仕事ができない。
 
医系技官が盾となっているから医療界は言いたい放題だ。

「医療界は、従来の体制のまま無理がない範囲で対応するよう努力するに留める」

「それで感染が拡がりそうなら、経済社会活動をコストや人々の自由を無視して制限しても止めろ」

だから、流行開始から一年たっても病床数は増えず、PCR検査の拡充も不十分、年末年始も連休中も医療機関は例年通り休み、ワクチンの承認は遅れ、接種も海外のように薬剤師などに門戸を開放しないので遅れそうだ。
 
そういう医療側の怠惰のしわ寄せで、感染者数が欧米の二十分の一なのに、経済社会活動が酷く止められ、結果、欧米並みにGDPは落ち込み、ワクチン接種の進行で回復基調にある欧米を尻目に沈んだまま。また、施設の親に会えないとか帰省できないので泣いている人も多い。
 

ワクチンを接種したら患者を診ずに帰省した「医療従事者」

さらに、許されないのが、ワクチンの医療従事者等優先接種である。どこの国でも高齢者施設入居者やその関係者を最優先にしているのに後回しにし、お手盛りで自分たちとその関係者を呆れるほど広範囲に最優先にした。

しかも、曖昧な基準で本当に従事者か怪しい家族なども対象にできなくもない余地をつくったので、四百八十万人という非常識な数に拡がった。この「医療従事者」のなかには「ワクチン打ったから」と、患者を診ずに帰省したとかいう人もいる。

ワクチン接種をめぐっては、地方自治体の長や地元有力企業の社長への優先接種が話題になっているが、そんなものは些事で、こっちのほうが深刻だろう。個別に対象が適切だったか事後チェックをすべきだ。

高齢者施設でクラスターが発生し、大量の死者が出ているのは、このようなお手盛りの結果だ。そして、その基準を決めたのは、医師会などの圧力を受けた、医系技官が事務局をつとめ、尾身氏が会長をつとめるコロナ分科会だと先月号でも書いた通りだ。

専門家の意見を寄せ集めても本当の国造りはできない

もうひとつ、何事につけても、前向きの発想ができないのかというと、細かい分野の専門家の決定の寄せ集めで政策体系が組まれるからだ。

専門家の意見と云っても、ガラパゴス的な日本だけ特殊な考え方をしているということも多い。

日本は学会も細分化されているので少人数の仲間内での多数派に過ぎないこともあれば、専門家の判断といっても学術的・技術的な判断でなく、世俗的な利益が絡んでいることも多い。
 
そして、専門外の観点からの配慮も必要なので、自分たちの専門領域だけの判断を押しつけられても困ることもある。

ならば、専門家の意見といっても、それをとるかどうかは、政治家が最終判断するか、あるいは、他分野の専門家からなる審議会等の意見を聞くべきだ。会社経営ですら、社内だけの判断では不十分だという流れではないか。
 
ただし、その一方で、専門家が独立した立場から意見をいうのに萎縮するのでは困る。多様な意見が出され、それを意思決定過程でも、その後も、参考にされることで大きな間違いも避けられる。
 
だから、政治任命が主体の米国はともかく、ヨーロッパ各国では、主要なポストは政治の意向も踏まえて任命されても、政権や省庁幹部と意見が違う官僚も地位を失わないように保証されていたり、政治任命できるポストが限られたりしている。
 
安倍内閣以来の官邸主導に批判が強いのは、そういう安全装置が用意されなかったからであって、政策の官邸主導そのものがいけないのではないと思う。
 
また、政治主導の息苦しさがあるのは、与野党交代が少ないからでもある。なぜ、そうかといえば、野党が憲法改正阻止を主たる目標にしているので、過半数でなく、三分の一の議席で満足するからだ。
 
小選挙区で改善するかと思い、民主党政権が誕生して健全な二大政治勢力の併存の時代になるかと思ったら、非現実的な政策で失敗し、政権に復帰するのが怖くなったからか、また、改憲阻止路線に戻ってしまった。
 
私は、いい加減、憲法改正をほどほどの内容なら受け入れ、憲法問題が主たる関心でなくなったほうが、野党のためにもいいと思うし、それをお薦めしたい。 強い官邸主導も、政権交代がときどきあるのなら、弊害は少ない。
 
コロナ対策でも、野党などが細々と文句を付けて足を引っ張るのでなく、大胆に即効性のある政策を政府が打ち出し実行させて、結果が悪ければ政権交代というのでなければ、中国との差がますます大きくなるばかりだ。
 
東京五輪も、野党は政府のお手並み拝見で、意見はいいつつも、足は引っ張らずに、とりあえずは、任せるべきである。それが国益のためだ。

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