菅総理のコロナ対応は「先手、先手」だ|下村博文(自民党政調会長)

菅総理のコロナ対応は「先手、先手」だ|下村博文(自民党政調会長)

菅総理はコロナ対応と経済とのバランスを考えたギリギリの判断を行っている。野党もメディアも無責任すぎる!自民党政調会長が「コロナ対応後手、後手」批判に全て答える。(聞き手:政治評論家・田村重信)


平時対応しかできない異常

田村 菅総理に対して「なんでもっとやらないんだ」といった批判が見られますが、そもそも日本は諸外国とは異なり、強制力を伴わないお願いベースの「要請」しかできません。法体系の問題から、やりたくてもできない。

下村 本質的な問題だと思いますね。このたび、罰則を盛り込んだ改正新型インフルエンザ等対策特別措置法と感染症法が成立し、2月13日に施行されました。入院に応じなかったり、入院先から逃げ出したりした場合、50万円以下の過料とし、緊急事態宣言の発令前でも事業者に時短命令を出すことができ、拒んだ場合は20万円以下の過料、緊急事態宣言下での時短や休業についても、これまでの要請に加えて命令を新設し、拒んだ場合は30万円以下の過料となりました。 改正法が施行される以前は、緊急事態宣言の時でも、たとえば自粛要請に応じないパチンコ店に大勢の人が詰めかけ問題になったことを覚えておられる読者の方も多いと思いますが、あくまでも「お願いベース」なので守らなくても罰則はありませんでした。陽性者が病院を抜け出し温泉に行って感染を拡大させたという事例も発生しましたが、同様に罰則に問われることはありませんでした。 もちろん国民の大多数はいまも自主的に三密を回避していますが、与野党の賛成で改正案が成立したことは大きな前進だと思います。

田村 憲法の問題もありますね。

下村 そうです。ご承知のとおり、日本の憲法には緊急事態条項が明記されておりません。比較憲法学が専門の西修駒澤大学名誉教授が、1990年以降に制定された104カ国の憲法を調査したところ、緊急事態条項の明記がない憲法はゼロだったと指摘しています。 一方で、日本は憲法に緊急事態条項がないため、有事でも平時対応しかできない。いわば救急車や警察車両が大事故、大事件が起きても必ず信号を守らなければならないというような異常な状況です。 新型コロナの例でいえば、諸外国は強制的なロックダウンができますが日本はできません。全てお願いベースなんです。いわば「後手、後手」に回らざるを得ない状況と言っても過言でありません。 国民の命と暮らしを守るためにも憲法を改正し、しっかりと緊急事態条項を明記する必要があります。私が会長を務めている「新たな国家ビジョンを考える議員連盟」でも、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、憲法を改正して緊急事態条項を設けるべきだとする提言をすでに纏め、提案しています。

「5類」にできない理由

田村 新型コロナウイルスの問題では指定感染症「2類」相当を5類相当に、すなわちインフルエンザ相当に変更すべきではないかとの意見も見られます。

下村 なぜ5類にできないかと言いますと、5類にすれば、いま田村さんが言われたようにインフルエンザ相当になります。するとどうなるか。検疫法でいま外国人の入国を止めていますが、これができなくなってしまいます。また、重症者は必ず入院してもらうことになっていますが、5類にすれば法的な強制力もなくなり、感染者の自由意思に委ねられます。事業者への時短命令や休業要請もできません。 さらにインフルエンザにはワクチンや特効薬がありますが、新型コロナには残念ながらまだありません。つまり、5類にできるような医学的、科学的な体制整備ができていないのです。したがって、いま5類に引き下げることはリスクが高い。逆に言えば、インフルエンザと同様にワクチンや特効薬ができれば、5類に引き下げる余地はあると考えています。

田村 ワクチン接種に関する見通しについてはいかがですか。

下村 ワクチンこそ新型コロナウイルス感染症拡大防止の切り札であり、国民の皆さんも大変な期待をされていると思います。一方で、副反応の不安も根強くある。世論調査でも、接種に否定的な意見が多く見られます。厚労省は副反応に対して過去の薬害問題もあり、諸外国以上に慎重になっています。  諸外国ではすでにワクチン接種が進んでいますが、日本ではそのハードルを高く設定している部分がどうしてもある。諸外国以上に、副反応については十分に検査に検査を重ねている状況です。接種の時期については菅総理も仰っているとおり、2月下旬から医療関係者、高齢者の方々を中心に順次行う予定です。

3億人分のワクチンを確保

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