田村 ファイザー社製のワクチンは、1人2回の接種で間を3週間程度置くことが必要とされていますね。
下村 そのファイザー社を含め、その他に2社からも日本はすでに3億1400万人分のワクチンを購入する予定で、数は十分に確保できる見込みです。
田村 この短期間にこれだけのワクチンを確保するのは大変な作業で、本来ならもっと評価されて然るべきですよね。
下村 かなり早い段階から、それこそ「先手、先手」で菅総理のもと準備をしてきており、さらに一気呵成にワクチン接種に向けた対応を進めるため、ワクチン担当大臣を新設し河野太郎大臣が任命されました。党でもコロナワクチンPT(プロジェクトチーム)を作り、座長に医師の鴨下一郎議員に就いていただきました。 よく「田村(憲久)厚労大臣や西村(康稔)新型コロナ担当大臣がいるのになぜ河野さんなのか」と訊かれるのですが、これこそまさに菅総理が強く推し進める縦割り行政の打破が鍵を握るからなんです。 ワクチンを海外から輸入し国民一人一人に接種するためには、タイムリーかつ的確に運ばなければなりません。すると、国土交通省の協力が必要となります。また実際に接種を進めるのは地方自治体ですが、きめ細かい準備が自治体でまだできていない。そこで総務省の役割も非常に重要であり、海外経由であれば外務省の役割も大きい。 つまり、ワクチン接種は各省庁横断の国家事業なんです。河野大臣自身も自ら「自分は輸送や保管、会場の設定といった接種に関するロジ(段取り:ロジスティックス)担当です」と仰っているように、ロジをうまく行うことが重要です。 いま、ヨーロッパではワクチンがなかなか入ってこないといった問題が起きていますが、そうした事態が起きないよう、またたとえ想定外のことが起きてもしっかりと対応できるように党も全面的にバックアップしていきます。2月下旬から医療従事者、そしてその後、高齢者を中心に接種が確実に開始できる万全の体制で臨む構えです。
東京オリンピック・パラリンピックの意義
田村 ワクチン接種が早期に実現し、7月の東京オリンピック・パラリンピックが開催できるといいのですが。初代東京五輪担当大臣を務められたのは下村先生ですね。
下村 私は東京オリンピック・パラリンピックを何としても開催すべきだと思っています。もちろんコロナの感染状況を見ながら、フルサイズの開催は難しいにしても感染拡大を抑えつつ、工夫しながら行えるのではないかと考えています。コロナ禍でも地方選挙や知事選は行われました。衆議院選挙も任期の今年10月までには必ず行わなければなりません。緊急事態条項が憲法に明記されている諸外国では選挙期間を延長するなどの措置がとれるのですが、日本ではそれはできません。 つまり、どんな状況下でも行わなければならないことを考えますと、五輪も行えると思うのです。そのことによって「どんな困難であっても、それに打ち勝つ姿勢」を人類が示すことができる。そうした意義ある大会に必ずなると思います。そのためにもワクチン接種は非常に重要です。
田村 ワクチンの件で気になるのは中国の動きです。いま、中国では積極的にワクチン外交を展開しています。 下村 日本には中国のワクチンを購入するという発想はありません。また、ワクチンを外交政策に利用するという考えも日本にはありません。日本はあくまでも国際的枠組み「COVAX」 (コバックス) を通じて、途上国においてもワクチンが行き渡るよう支援の枠組み作りを進めています。決して自国の利益だけを求めるのではなく、国際社会と協調して取り組んでいくべき課題だと思っています。
田村 支援ということに関しては、日本国内でもコロナによる経済的な影響が懸念され、支援を求める声が多い。2020年の自殺者数は2万919人で、リーマン・ショック直後の09年以来、11年ぶりに増加に転じました。なかでも女性や若年層の増加が目立つなど深刻な問題で、まさに政治の力が求められています。
下村 コロナによって一番大変な思いをされているのが、社会的立場の弱い人たちだと痛感しています。特に若い女性の方、ひとり親家庭の女性です。いま、ひとり親家庭の約6割が貧困家庭との調査もあります。 緊急事態宣言の延長を受けて、直ちに党として政府に、生活困窮者の支援として緊急小口資金、総合支援資金を拡充し、必要とする人たちに確実に支援が届くよう緊急の申し入れを行いました。また、緊急事態宣言が発令されていないエリアでも、時短営業要請など独自の対策を講じる自治体を対象に、第三次補正予算に計上した地方創生臨時交付金を通じ、幅広い支援策が可能となるよう求めるなど、本当に困っている人たち、生活困窮者や社会的に弱い立場の人たちへ支援が確実に届くような対策を講じます。