またしても台風が日本列島を席巻中。各地の被害が心配だが、台風シーズンとはいえ、雨量やその降り方の激しさは「過去に経験のないもの」と警告されるほど。これが災害多発・被害拡大につながっていることは論を俟たない。
大石 今回の西日本豪雨にも、昨年の九州北部豪雨にも共通しますが、気象庁や国土交通省のデータにも表れているように、線状降水帯が発生し、短時間に強度の雨が連続して降るという、かつてはあまりなかった現象が起きています。私が言うところの「気象の凶暴化」が起きていることは間違いありません。
しかし「それだけではない」。
大石 それ(災害)に対する備えが不十分だったことも原因です。今回の西日本豪雨では、改修が必要だとわかっていて計画までできていたにもかかわらず、間に合わなかったのです。
ハザードマップどおりの浸水が起きたということは、被害が予測できていた。にもかかわらず、防げなかったということでもあります。それでここまで被害が出てしまったことが、残念で残念でなりません。
藤井 なぜ(岡山県倉敷市真備町を流れる)小田川が決壊したのか。どうして工事が間に合わなかったのか。なぜ50人もの方が亡くなったのか。これはひとえに、緊縮財政によるものです。私は今回の災害について、裏方の話や事情を詳しく聞き取りしていますが、そのうえで「この国に緊縮財政派が存在しなければ、小田川の河川改修工事は終わっていたであろう」と確信しています。
緊縮財政により工事を行う予算がつかず、事業のスピードが遅れ、改修が行われず、被害が出てしまったとしか言いようがありません。
つまり、夏の間に起きた災害も、これから発生する可能性のある被害も、「人災」の側面を否定できないということなのだ。
特に、「改修が必要とされていながら、工事が後回しにされている」地域の住民は気が気ではない。「なぜ、大雨が降れば被害が出るとわかっているのに、対策が遅れているのか」という疑問を持つのは当然だろう。しかもそれが「工事を行う予算がつかないから」となれば、自分たちの生活や命さえも軽んじられているということになる。
緊縮財政派による「不作為殺人」
なぜ、こんなことが起きるのか。ましてや、この日本で――。
藤井 (責任があるのは)国会および政府と言わざるを得ません。予算を審議するのは国会ですから、防災のための予算を割くことを認めない国会、そして政府に大きな責任があります。
ただ実質的には、緊縮財政派の人々の影響を指摘せざるを得ません。緊縮財政派の官僚、省庁、議員、エコノミスト、ジャーナリスト、学者……日本の主たる知識層全体の責任だと言ってもいい。猛省すべきです。
つまり、「将来にツケを残すな」「借金大国日本、このままでは破綻する」と声高に警鐘を鳴らす人々が、災害への対策にブレーキをかけていることになる。藤井氏が
〈「緊縮財政」を主張する人々や政治勢力による「不作為殺人」と言わざるを得ない〉
とまで断じるのも当然だ。