中国共産党のフロント企業である上海電力が青森県で3件、風力発電事業の認可を受けている。3月、むつ市に立地する2件を視察した。
1件目は同市関根の使用済み核燃料中間貯蔵施設に隣接する空地であったが、地元では風力発電予定地で上海電力が事業認可を受けていることを知らなかった。それもその筈で、登記を確認すると、土地は日本人名義であり、認可は上海電力という名前ではなく、「SMW東北」という合同会社の名前で下りている。
2件目の海上自衛隊大湊航空隊基地から車で10分の場所でも、同じ合同会社が風力発電の事業認可を受けていた。ここも地権者は日本人で、地元の漁業協同組合や材木屋は、上海電力が事業を行うという認識を持っていなかった。
核関連施設の隣に上海電力用地
SMW東北の住所は東京都千代田区丸の内の上海電力の事務所にあり、申請者はS氏という中国人である。上海電力は、青森で風力、兵庫、栃木、大阪、福島、茨城、山口でソーラー(太陽光)事業を展開しているが、何れも上海電力という名前は使っておらず、別の合同会社や株式会社名で認可を受けている。
むつ市の2件は何れも、グリーンという美名の下に、戦略的に重要な土地の使用権が上海電力に渡っている例である。原子力関連施設や自衛隊基地の1キロ圏内は、重要土地利用規制法の対象である筈だ。むつ市関根の風力発電予定地は中間貯蔵施設と道路を挟んで接する土地で、明らかに規制対象になる。重要土地法で規制できないものだろうか。同法を所管する内閣府の担当者に問うと、残念ながら「阻害行為が行われない限り売買や利用を規制できない」という回答だった。風力発電やメガソーラーは阻害行為に該当しないようである。
何のための重要土地法だろうか。国際条約が国内法に優先するという口実で、サービスの貿易に関する一般協定(GATS)を盾に、敵対する国にも土地利用の権限を容認するのは、国として国民の財産と生命を守る意志を放棄しているのも同じである。
重要インフラの外資依存は危険
まず、再生エネルギー事業から中国共産党のフロント企業を外すべきである。領土保全という観点からみて、敵対する国が島嶼部、水源、エネルギー施設やインフラを抑えることは、日中関係がこじれた時、武器を使わない侵略の前哨地となりうる。
そもそも電力と水は国力の礎であり、インフラを外資に譲ることは国力を弱体化する。日本は電力を安価で安定的に供給できる自前の原子力発電や火力発電の技術がありながら、中国製の風車やソーラーパネルを導入してきた。再エネは天候に左右され、発電効率も悪い。
東日本大震災以降、原子力規制委員会の審査の遅れで、稼働が進んでいないと聞いていた青森県の原発施設では、大勢の作業員や職員が先の見えない稼働日を目指して懸命に作業を続けていた。日本が誇る原子力技術は今も健在である。国民経済よりもグローバリズムを優先するグリーン政策で、中国に国土の侵食を許すのか。今こそ政治の力が必要である。(2023.04.11国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)