大雨のたびに 災害発生……日本は「インフラ後進国」だ!|大石久和×藤井聡

大雨のたびに 災害発生……日本は「インフラ後進国」だ!|大石久和×藤井聡

大石久和×藤井聡


大石久和さんと藤井聡さんの対談「緊縮財政派が招いた西日本豪雨災害」

大石久和×藤井聡 緊縮財政派が招いた西日本豪雨災害

月刊Hanada2018年10月号』より、大石久和さんと藤井聡さんの対談「緊縮財政派が招いた西日本豪雨災害」をご紹介いたします。

災害の「凶暴化」

またしても台風が日本列島を席巻中。各地の被害が心配だが、台風シーズンとはいえ、雨量やその降り方の激しさは「過去に経験のないもの」と警告されるほど。これが災害多発・被害拡大につながっていることは論を俟たない。


大石 今回の西日本豪雨にも、昨年の九州北部豪雨にも共通しますが、気象庁や国土交通省のデータにも表れているように、線状降水帯が発生し、短時間に強度の雨が連続して降るという、かつてはあまりなかった現象が起きています。私が言うところの「気象の凶暴化」が起きていることは間違いありません。


しかし「それだけではない」。


大石 それ(災害)に対する備えが不十分だったことも原因です。今回の西日本豪雨では、改修が必要だとわかっていて計画までできていたにもかかわらず、間に合わなかったのです。


ハザードマップどおりの浸水が起きたということは、被害が予測できていた。にもかかわらず、防げなかったということでもあります。それでここまで被害が出てしまったことが、残念で残念でなりません。


藤井 なぜ(岡山県倉敷市真備町を流れる)小田川が決壊したのか。どうして工事が間に合わなかったのか。なぜ50人もの方が亡くなったのか。これはひとえに、緊縮財政によるものです。私は今回の災害について、裏方の話や事情を詳しく聞き取りしていますが、そのうえで「この国に緊縮財政派が存在しなければ、小田川の河川改修工事は終わっていたであろう」と確信しています。


緊縮財政により工事を行う予算がつかず、事業のスピードが遅れ、改修が行われず、被害が出てしまったとしか言いようがありません。


つまり、夏の間に起きた災害も、これから発生する可能性のある被害も、「人災」の側面を否定できないということなのだ。


特に、「改修が必要とされていながら、工事が後回しにされている」地域の住民は気が気ではない。「なぜ、大雨が降れば被害が出るとわかっているのに、対策が遅れているのか」という疑問を持つのは当然だろう。しかもそれが「工事を行う予算がつかないから」となれば、自分たちの生活や命さえも軽んじられているということになる。

緊縮財政派による「不作為殺人」

なぜ、こんなことが起きるのか。ましてや、この日本で――。


藤井 (責任があるのは)国会および政府と言わざるを得ません。予算を審議するのは国会ですから、防災のための予算を割くことを認めない国会、そして政府に大きな責任があります。


ただ実質的には、緊縮財政派の人々の影響を指摘せざるを得ません。緊縮財政派の官僚、省庁、議員、エコノミスト、ジャーナリスト、学者……日本の主たる知識層全体の責任だと言ってもいい。猛省すべきです。


つまり、「将来にツケを残すな」「借金大国日本、このままでは破綻する」と声高に警鐘を鳴らす人々が、災害への対策にブレーキをかけていることになる。藤井氏が

「緊縮財政」を主張する人々や政治勢力による「不作為殺人」と言わざるを得ない

とまで断じるのも当然だ。

日本は「インフラ後進国」

確かにこの十数年、日本ではことさらに「公共事業批判」が行なわれてきた。無駄な箱モノを作るな、ダムは不要……。だが、必要な河川の改修や堤防の整備、土砂災害対策までも後回しにするのは問題だ。それでもこのような声はあるだろう。「もう日本のインフラ整備は十分なのではないか?」。だが、「それは全くの間違い」だという。


大石 日本の場合、主要河川の改修率は60~70%に留まっています。整備計画はできているのに、予算がなくて実施できていない。情けない話です。諸外国と比較しても、日本は後れを取っています。


藤井 要するに、日本はもはや先進国ではなく、むしろ後進国と言わざるを得ない状況にあるのです。技術はあっても、緊縮財政の制約が激しく、実施できていない。そもそも梅雨時や台風のシーズンというのは、毎年やってくる「雨季」です。そしてその雨季になればもうそれだけで毎年、何十名、何百人もの方が命を落とすような国は、途上国と言わざるを得ません。


大石 1千人から1万人単位の人々に避難指示が出て、実際に何人もの方が亡くなっているのに、それでも対策のための予算を割かない。およそ理性的な判断とは思えません。

「財政守って国滅ぶ」でいいのか

ここまでを読んでも、「それでも借金が膨らめば日本の財政は破綻する」「そうなれば災害対策も何もない」という声はあろう。しかし、藤井・大石両氏は「財政破綻リスクは皆無」「災害リスクとはくらべものにならないほど極小」と指摘する。


大石 そもそも2002年に財務省自身が、「自国通貨建ての国債を出している国がデフォルトする可能性はない。過去にそのような国がデフォルトした例もない」と明確に発表しています。財政破綻する可能性は極めて低く、財務省もそのことは分かっているはずです。


公共事業費を増やし、資本形成を増やせば、GDPも上がる。経済が成長しますから、税収も必ず上がる。にもかかわらず、いま財政規律派がやろうとしているのは全く反対で、支出を抑えて増税しようという政策です。これでは、いつまでたってもデフレは脱却できない。


藤井 緊縮財政派が何よりも愚かなのは、税収が増えないのは緊縮財政をしているからだ、という真実に気がついていない点だと思います。積極財政を行えば経済は拡大して税収が増え、財政が改善する。一方、緊縮すれば逆に税収が減り、財政が悪化する。


データを見れば緊縮財政こそが財政を悪化させているのは明白なのですが、多くの経済学者や官僚、政治家たちがこのダイナミックな構図を理解していないのです。


――まさに「財政守って国滅ぶ」。緊縮財政派の「罪」や、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模災害への提言、そして将来への思いが詰まった対談を、ぜひお読みください。

大好評発売中です!

関連するキーワード


編集部 政治・経済 著者

関連する投稿


山本太郎ファクトチェック|坂井広志

山本太郎ファクトチェック|坂井広志

「空気を読めるから、空気を読まない」。“歩く風評被害”と呼ばれる山本太郎がついに、東京都知事選に立候補。“おもしろい”選挙戦になることは間違いないが、“おもしろい”で本当にいいのだろうか。空気に流されないために、山本太郎の過去の言説をファクトチェック!彼は民主主義の救世主か、それとも……。“ファンタジー・ヤマモトタロウ”の正体とは?


感染爆発回避した日本人の力|櫻井よしこ

感染爆発回避した日本人の力|櫻井よしこ

命令権の発動なしにここまで達成したのは、日本でなければできない立派なことだ。ただウイルスとの闘いはこれからも恐らく長く続くだろう。第2波、第3波の襲来を現体制で乗り切れるのか。わが国の危機対応体制はこのままでよいのか。


三種の武漢ウイルス 「集団免疫」という起死回生|山口敬之

三種の武漢ウイルス 「集団免疫」という起死回生|山口敬之

「安倍政権は死因までも誤魔化しているのだ」。安倍政権のコロナ対応は失敗だったのか。日本はウイルスの抑え込みに最も成功した国であるにもかかわらず、なぜ、支持率は急落したのか。安倍政権の一連の対応を振り返りながら、“集団免疫獲得”の実像に迫る!L型の流入の有無こそが、日米伊の分水嶺となった――。


致死率と死亡率を混同 危機煽るワイドショー|藤原かずえ

致死率と死亡率を混同 危機煽るワイドショー|藤原かずえ

日本は世界の主要国に比べて死亡率が極めて低い。にもかかわらず、日本国民の日本政府への評価が低いのはなぜなのか。ひとつの理由が、常識的な安倍政権のリスク管理をワイドショーがヒステリックに罵倒し、情報弱者をミスリードしたことにある――。新型コロナをめぐる日本政府の一連の対応を、データとロジックで読み解く!日本モデルは成功したのか、それとも――。


「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口|牧野のぞみ

「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口|牧野のぞみ

「10年前の今日(5月6日)、娘が誘拐された――。2歳だった娘は、いまや中学生である」。突然、愛するわが子を奪われた父親(A氏)。彼の身に、いったい、なにが起きたのか。その背後には、連れ去り勝ち、虚偽のDVなど「実子誘拐」の方法を指南する人権派弁護士らの暗躍があった――。愛する娘を奪われた父親が、魂の告発!日本で日常的に行われている「実子誘拐ビジネス」の闇に迫る!


最新の投稿


日本の先端技術を海外流出から守れ|奈良林直

日本の先端技術を海外流出から守れ|奈良林直

中国は毎年5000人の留学生を選抜し、外国の一流大学に国費留学生として送り出し、工学やバイオなどの先端分野を学ばせて、自国に無い技術を吸収してきた。日本は外国人留学生の最多を占める12万人の中国人学生を受け入れているが――。


【動画】今明かされる平成「失われた30年」の新事実|上念司×高橋洋一

【動画】今明かされる平成「失われた30年」の新事実|上念司×高橋洋一

『経済で読み解く日本史』6巻セット発売記念・特典オーディオブック収録。平成経済の裏の裏を知り尽くした高橋洋一氏が経済と金融の裏面を語る!


なべやかん遺産|「キングギドラ」

なべやかん遺産|「キングギドラ」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「キングギドラ」!


自称元慰安婦と悪徳活動家集団の正体|山岡鉄秀

自称元慰安婦と悪徳活動家集団の正体|山岡鉄秀

“詐欺師”と“詐欺師”の痴話喧嘩で、積もり積もった嘘と不正がついに噴出!元慰安婦支援団体「挺対協(現・正義連)」とはいったいどんな組織なのか。北朝鮮との関係、日本社会党との秘密会談、「挺対協」結成の経緯が改めて明らかに。銭ゲバたちによる“慰安婦像ビジネス”はもう終わりにすべきだ。


The identity of an organization dealing with the Korean comfort women issue |Tetsuhide Yamaoka

The identity of an organization dealing with the Korean comfort women issue |Tetsuhide Yamaoka

The shameful identity of "the Korean Council for the Women Drafted for Military Sexual Slavery by Japan"is now revealing itself through the disgraceful infighting between Ms. Lee Yong-soo, a self-proclaimed former comfort woman, and Ms. Yoon Mi-hyang, the former representative of the Council.